1988年カルガリー冬季五輪。雪も氷も見られないカリブ海の島国、ジャマイカの選手たちがボブスレー種目に参加した。古いそりを持って登場した彼らを見て、人々は笑った。ところが、試合中に壊れたそりを肩につないだまま決勝点を通過した彼らを見て人々は感動した。遠くジャマイカでこの場面を見守っていた14歳の少年の心には、冬季五輪のメダルの夢が芽生えていた。
ジャマイカ・ボブスレーチームの実話を描いた映画「クールランニング(1993年作)」の夢が、06トリノ冬季五輪で現実になった。主人公は、今回の五輪開幕の1ヵ月前、カナダに国籍を移したレセルレス・ブラウン(32)。ブラウンは20日に行われた男子ボブスレー2人乗りで、仲間のピエル・ローダースとともに、合計3分43秒59を記録して優勝チーム・ドイツに0.21秒遅れる記録で銀メダルを獲得した。
1999年から04年までジャマイカ国家代表として活躍したブラウンは、02年ソルトレイクシティ大会に出場して28位にとどまった後、カナダへ移って体系的なトレーニングを受けた。その後、結婚してカナダ国籍を取得した。ブラウンの母国ジャマイカは今回の冬季五輪に参加しなかった。
銀メダルが確定した後、仲間のローダースを抱きしめて泣き崩れたブラウンは、「私をボブスレーに導いてくれたのはジャマイカだ」とし、「そこで呼吸を合わせていたパートナーとは数ヵ所を転々としながらトレーニングしなければならなかったが、カナダではそうする必要がなかった」と話した。
19日に行われたスピードスケート男子1000メートルで黒人としては冬季五輪個人種目で初めて金メダルを手にした米国のシャーニー・デイビスに続いて、ボブスレーで銀メダルを取ったブラウン。22日未明、ソルトレイクシティ大会に続いて女子ボブスレー2連覇に挑戦する米国のボネタ・フラフォースまで、トリノに吹き寄せる「黒人突風」に興味津々だ。
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