目先の利益のために産業機密を海外に流出しようとする側と、その動きを食い止めたい情報当局の「銃声なき戦争」が国境を越え、世界のあらゆる市場で展開されている。
このようなスパイ戦は、そのほとんどが何気なく口にした言葉や社内で見られたささいな動きが端緒となる。
2004年5月に摘発された携帯電話メーカーP社の機密流出事件は、20代の女子職員が1000万ウォンを超える成果給が支給される1ヵ月前に、これといった理由もなしに会社を辞めたことをいぶかしんだ当局の調査が、発端となった。
国家情報院(国情院)は、この女子職員の行跡を追う過程で8人の研究員が相次いで会社を辞め、最新の携帯電話の製造技術を香港のメーカーに売ろうとしているという情報をつかみ、技術流出の間際でこれら職員の検挙に成功した。この技術の流出による被害は、年間1兆5000億ウォンと見込まれていた。
一言、二言と、まとまりのない漠然とした情報提供も糸口になる。2003年5月、真夜中に国情院に一通の電話がかかってきた。「米国にいる者」としか名乗らないこの情報提供者は「私の知り合いはあまりにもひどいことを計画している。S社側の人とともに最新のPDP(プラズマディスプレイパネル)技術を、外国に渡そうとしている」という内容だった。
S社の内部事情を調べた結果、取締役昇進に失敗したチョン容疑者が浮かび上がった。米国で自営業をしているチョン容疑者容疑者の後輩が「PDP関連技術を渡せば、1件当たり2億ウォンはもらえる」とそそのかしたことを突き止めた。残りは証拠確保となった。
国情院は、チョン容疑者が郵便で機密資料を海外に郵送する計画であるという情報を入手し、数日間チョン容疑者の自宅周辺の郵便局約20ヵ所ですべての郵便物を逐一調べたが確証はつかめなかった。最後の手段としてチョン容疑者の個人用パソコンを押収し、会社の重要機密をコピーしていたことを確認し、同容疑者を逮捕した。
国情院が2003年から今年6月末まで摘発した海外への技術流出件数は計72件。このうち54件(75%)は半導体と携帯電話関連技術である。最近には中小企業の部品素材など、技術分野にまで見境なく拡大する様相を呈している。
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