中国の首都は現在北京だが、中国の歴史で最も長い間首都だった街は西安である。中国初の統一王朝である秦をはじめ、「中国」というアイデンティティーを確立した漢、西域との貿易で中国の名を世界に知らせた唐など、14の王朝が1100年間、この西安で栄えた。韓国人としては、旧名称の長安の方が馴染みが深いだろう。西安を省都とする陝西省は、夏、殷、周と続く黄河文明の発祥地である。
◆ソウル歴史博物館で9日まで「陝西省文物特別展」が開かれる。秦の始皇帝陵で出土された石弓手の兵馬俑が展示会場の入り口を守っている。約8000の兵馬俑のうち、彩色状態が最も良好なものの一つで、今回、韓国まで来てその雄姿を披露する。一緒に出土された青銅製の水鳥も優麗なラインや躍動感が見事な傑作だ。唐三彩明器ラクダは、シルクロードの出発点であり、東西交流の拠点都市だった7〜9世紀の長安の文化の豊かさをうかがわせる。この明器のように保存状態のよい唐三彩は世界的にもまれであるという。
◆珍奇な遺物が韓国に来られたのは、陝西省政府の積極的にことを進めたためだ。「展示する場所さえあればいい」として、遺物の貸出料はもちろん、保険料、運送費用まですべて中国が負担したため、入場料もない。この展示会は、来年の北京オリンピックをにらみ、北京から飛行機で1時間半距離の陝西省に観光客を呼び込もうと周到に企画された「おとり商品」である。そのため、展示会のパンフレットにも「2008年の北京オリンピック、観光は陝西省で」と書かれてある。
◆ソウル歴史博物館では、先月まで「中国国宝展」が開かれていたが、その展示品325点のうち、65点が陝西省からのものだった。陝西省側が「せっかく遺物を送っているので、この機会を利用して陝西省特別展を開きたい」とし、より貴重な所蔵品約30点をさらに送ってきたのである。陝西省だけではなく、中国の他の地方政府も韓国人観光客の誘致に大きな関心を示している。韓国とは比べものにならないほど豊かな観光資源を持っている中国がこんなに熱心であるのとは対照的に、韓国は旅行収支の赤字規模が年々史上最多の記録を更新しているのに、あまりにも呑気である。
虚承虎(ホ・スンホ)論説委員 tigera@donga.com