公企業を中心に賃金を引き下げ、新規採用を増やす「仕事の分け合い」が推進される。韓国電力とその子会社である韓国水力原子力をはじめ、さまざまな国策金融機関では、大卒初任給を下げ、新入社員を追加採用する計画を明らかにしている。今のところ、参加公企業は多くはないが、民間企業も積極的に参加すれば、その効果は少なくないだろう。
今、我々には一つの雇用も大切だ。1月の輸出は29%も減少し、韓国開発研究院(KDI)は今年の成長予測値を0.7%へ下方修正した。1998年の通貨危機以後最悪の状態であり、新たな雇用増大どころか、減少は避けられない現状だ。新たな雇用を生むためには、少なくとも2%台の成長を遂げなければならない。卒業シーズンの2月以降、最悪の雇用大乱が懸念される。政府や企業、労組が苦痛を分かち合い、手を取り合って仕事の分け合いを先導すべきだ。政府も企業の参加を誘導するため、貸出金利の引き下げや税金支払いの延期などインセンティブの準備をさらに急ぐべきだ。
仕事の分け合いが成功するためには、賃金水準を下げなければならない。1日12時間の勤務を8時間3交代へと変え、雇用を増やしても、人件費が減らなければ無用である。アイルランドやオランダは、労使政が賃金引下げや雇用増大に合意したことで、成功の事例として取り上げられている。過度な労働市場に対する規制も緩和されるべきだ。採用や解雇条件、雇用条件を巡る規制が柔軟でなければ、余裕のある企業すら雇用を渋るだろう。フランスは法定労働時間を短縮し仕事の分け合いを試みたが、雇用増加へと繋がらず失敗した。
大卒初任給であれ、社員の賃金であれ、引き下げてこそ追加採用が可能となる。韓国内の大卒初任給は、競争諸国の水準に比べ、過度に高い。昨年、ある経済団体の調査結果、韓国の大卒初任給は日本よりも高く、競争国である台湾の2倍に上る。この格差なら、競争力を失わないためにも、大卒初任給の引き下げが必要だ。
一部の大手企業や公企業の大卒新入社員の過度な高賃金が、国家経済に及ぼす悪影響は大きい。大卒者らが高賃金の大企業や公企業に拘り、就職浪人は増えているが、中小企業は求人難で、地団太を踏んでいるのが現状だ。高い教育費を払い、育てた人材資源の無駄遣いに他ならない。このような雇用構造を変えない限り、中小企業で一途に働く人が成功し、社会的に優遇を受けることは不可能である。
大卒初任給は学歴、職種別の賃金水準を比較する基準値となる。大卒初任給が上がれば、高卒の賃金も同様に上がり、日雇いや非正規の賃金も影響を受ける。したがって、日本より20%も高い大卒初任給では、産業競争力の維持は難しい。韓国内価格が高く、ゴルフのため海外へ行き、観光客が来ないのもこれと無縁ではない。遠因を突き詰めると、国際的に価格競争力の落ちる高賃金、高費用の構造にある。このままいくと、輸出増大や国際収支の改善とも期待できない。雇用大乱を目前にしている今こそ、逆に「高費用の難病」を治せるチャンスでもある。