北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記が7日、義理の弟である張成沢(チャン・ソンテク)労働党行政部長を国防委副委員長に昇進させてナンバー2にしたことで、三男・金ジョンウン氏への「3代世襲」作業を中断したか速度調整に出た、という分析が出ている。
しかし、北朝鮮指導部が最近、頻繁に労働党中央委員会と政治局を強調していることから、ジョンウン氏がすでに労働党高官職を担い、後継体制の構築を図っているのではないかという、逆の見方も流れている。
●張成沢カードを出した理由は?
梨花(イファ)女子大学統一学研究所の李スンヨル研究委員は8日、「北朝鮮が、強盛大国の門を開くと公言した12年までに後継問題を終えるには、今の時点で後継者が公式化されていなければならない。金総書記が、最高人民会議に直接提案する形で張部長をナンバー2に登板させたのは、血統継承をあきらめ、張部長への権力継承を念頭に置いた可能性もある」と話した。
北朝鮮情勢に詳しい情報筋も、「労働党中央委員会が最近、課長級以上の幹部を招集して、『金正日時代は百年、千年、永遠であり、後継問題を言及する者は地位を問わず厳罰に処する』という指針を下した」と伝えた。同筋は、「今年初めのデノミネーション(通貨呼称の変更)の失敗の責任を負って銃殺、または職を追われた朴南基(パク・ナムギ)労働党計画財政部長と、2日に交通事故で死亡した李済剛(イ・ジェガン)労働党組織指導部第1部部長は、実際のところジョンウン氏を擁立しようとして罰を受けた」と主張した。
北朝鮮内部では、ジョンウン氏の後見の勢力が相次いで姿を消す不可解な動きを「第2の鄭夏哲(チョン・ハチョル)事件」と呼んでいるという。最近の状況が、00年代初め、鄭夏哲労働党中央委員が金総書記の心を読み誤って、金正哲(キム・ジョンチョル)氏とジョンウン氏の生母である高英姫(コ・ヨンヒ)氏を偶像化し、粛清された状況と似ているという。
一方では、金総書記が張部長に、ジョンウン氏を牽制する役割を任せたという観測もある。対外経済政策研究院国際開発協力センターの趙明哲(チョ・ミョンチョル)所長は、「張部長がジョンウン氏の後継体制構築を助けると思うが、単なる後見人の次元を越え、後継者であるジョンウン氏が打ち出した急進的な政策をトーンダウンさせる役割をするだろう」と分析した。
●ジョンウン氏後継に向けた党機能を回復か
しかし、金総書記が張部長をナンバー2に浮上させたことは、高齢と健康不安で、身体的、心理的後遺症を病んでいる状況下で、家族と側近に頼ろうとする心理が反映したことの以上でも以下でもないという反論もある。
ジョンウン氏が、秘密裏に労働党内の高官職を担い、水面下で自身の後継体制構築を進めている可能性があるという観測もある。
朝鮮中央通信など北朝鮮メディアは7日、最高人民会議の結果を伝え、「会議では、第一の議事で、朝鮮労働党中央委員会政治局の提案によって、金英逸(キム・ヨンイル)内閣首相を解任し、崔英林(チェ・ヨンリム)代議員を内閣首相に選出した」と報じた。特に、目につく内容は、「政治局の提案によって」という表現だ。
北朝鮮指導部が内閣首相を任命する際、「政治局の提案」によることを言及したのは、1988年の労働党中央委員会第6期15回全員会議で延亨黙(ヨン・ヒョンムク)首相が任命された時以来22年ぶりのことだ。労働党中央委員会が言及されたのも、98年の第10期最高人民会議での洪成南(ホン・ソンナム)首相の任命以来12年ぶりだ。
このため、ジョンウン氏がすでに「政治局委員」として活動しているのではないかという観測が流れている。金総書記も、74年に「中央委政治委員」に任命されている。
金日成(キム・イルソン)主席の生前、労働党政治局は、重要な国家政策を決定する政治の中心だった。94年に金主席が死亡し、98年に息子の金総書記が公式的な最高指導者の地位に就き、政治局の機能は顕著に低下した。
金総書記は、協議体制で運営される政治局などの労働党の公式機構を通さず、個別のエリートとの1対1の疎通や秘密のパーティーなど、非公式の空間での「側近政治」を通じて重要政策を立案し、執行してきた。
今年4月15日、金主席の誕生日を記念した中央報告大会で、14年ぶりに「党中央委員会を死守しよう」というスローガンが再登場したこととも関係があると見受けられている。金総書記が、74年2月13日の党中央委全員会議で政治委員に内定された後、「偉大なる首領様と党中央を死守しよう」という表現が登場した。
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