1963年9月15日。大韓民国のラーメンの元祖が誕生した日だ。1個当たりの価格は10ウォン。貧しい人たちが食べるお粥が5ウォン、コーヒー一杯が35ウォンだった時代に、安価で簡単に調理できる食品が、水星のごとく登場した。当初、消費者の反応は芳しくなかった。これまで聞いたこともない食べ物だった上、ラーメンという耳慣れない名前から、服の生地を思い浮かべたためだ。しかし、ラーメンの普及のための無料試食会がいたるところで行われ、1965年から混食、粉食奨励政策が始まり、少ない費用で一食を解決できるラーメンの立場は、すぐに確固たるものとなった。
◆韓国生まれの1号のラーメンを作った三養(サムヤン)食品の創業主が、他界した。彼の他界のニュースに接した中高年世代の中には、母親が取り出した橙色の袋だけを見ても、胸の躍った小さなごろを思い浮かばせた人たちが多かったはずだ。ラーメンは、それこそ天国の味であり、子供らを誘惑した。ラーメンがいくら高級化しても、種類が多様化しても、一滴の汁も大事にしながら飲んでいたあの時、あの時代の味に追いつくことなどできそうも無い。北朝鮮による脅威が高まる時、各家庭ごとに非常食料として、ラーメン買い溜めに乗り出した記憶も生々しい。
◆わが国のラーメンは、今や世界人の口を虜にしている。13年のラーメンの輸出額は2億1552万ドル。韓国のラーメンを最も多く購入した国は、ほかならぬラーメンを初めて商品化した日本だ。韓国のラーメンを輸入する国は、ロシアやスウェーデン、サウジアラビア、ケニアなどや、島国のツバルにいたるまで、計124国を数えている。韓国人のラーメンへのこだわりも、格別だ。12年基準で1年間の消費量は35億2000万個と、世界7位、1人当たりの消費量は、揺るぎのない世界トップ(27個)を固守している。
◆思い出で食べ、味で食べ、腹が減ったので食べるラーメン。おいしいラーメンへの考え方は、人それぞれ違う。こしのつよい麺が好きな人と、やや伸びたラーメンが好きな人、長ネギを細かく刻んで入れたラーメンをより好む人と、一枚のチーズを乗せて食べる人。ネット上には、ラーメンのおいしい作り方が溢れている。包装紙の裏に書かれた調理法どおりにやるのが安全な道だが、各自の口に合わせて、多様な調理ができることも、ラーメンの強みだ。
高美錫(コ・ミソク)論説委員 mskoh119@donga.com