中国の習近平国家主席の韓国国賓訪問は、韓中関係はもとより韓半島に対する中国の国家利益という点で大きな関心を引いた。韓中関係は、両国だけでなく北東アジア地域全体に重要になった。中国は、韓国の最大の貿易相手国だ。韓国企業は、域内の生産ネットワークで取って代わることのできないつながりを築き、中国経済の未来と東アジアの繁栄にとって重大な存在だ。
ソウルの内外では、習主席が中国と以前から理念や安保関係を築いてきた北朝鮮の前に韓国を訪問したという事実に注目した。実は、中国の指導者が平壌(ピョンヤン)であれ北京であれ、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記に会う前にソウル行きを決めたことは、それほど驚くことではない。中国が、韓国と外交関係を樹立して20年余りの間、将来の利害関係において戦略的な選択をしたという点は明らかになった。中国は、経済的に窮乏し政治的にも失敗している北朝鮮よりも、活力あふれ躍動的な韓国と堅固な関係を結ぶことが必要だ。
しかし、中国は隣国の安定と平穏を望む。脆弱で滅びゆく北朝鮮は、中国の国家利益に脅威になる。この20年間、中国の指導者は、中国式モデルに従って真摯な経済改革に乗り出すことを平壌に求めてきた。中国は、金正日(キム・ジョンイル)総書記が中国を旅行し、経済改革の実りを目にするよう支援した。「中国でできるなら北朝鮮でもできる」と平壌政権に迫った。中国は、北朝鮮を説得し、すぐに真摯な改革が始まると考えた。
しかし、北朝鮮指導部が中国スタイルの改革を真剣に考慮したという証拠はない。なぜそうなのかは簡単に理解できる。中国は、東アジア全域に広がった海外の中華資本を引き込んだ。それが中国人民の暮らしを向上させることさえできれば、それでよかった。北朝鮮は計算法がまったく異なる。北朝鮮経済を立て直す実質的な資本の源泉は、韓国だけだ。むろん中国も投資したが、北朝鮮の優先順位ではなかった。
北朝鮮は、韓国の大規模な投資によって経済を開放すれば、生存が脅かされると考えて恐れる。南北の体制をどう比較しても、北朝鮮が明確に敗者だ。北朝鮮は、金大中(キム・デジュン)政府の「太陽政策」期間中、少しの間制限的な経済改革を実験した。そうしなければ、中国の強い圧迫のため、改革が危険になると考えた。しかし、北朝鮮は偏向した経済を維持するために必要な食糧とエネルギーを中国に依存することを選んだ。
だからといって、北朝鮮が自分の生存に重要だと信じる問題に対してまで、中国の圧迫に弱くなったわけではない。平壌は核計画の中止を迫る北京の要求を拒否した。
米国でも、「中国が援助というテコを使ってもう少し北朝鮮に迫れば、北朝鮮は降参するだろう」という主張が出ている。これに対して中国は、あまりにも圧力を加えて金氏体制が崩壊することを憂慮する。多くの中国人は、核を持つ北朝鮮が自国の利益に脅威だと考えるが、北朝鮮の崩壊が招く結果をより恐れる。
そのため、中国が今後それなりに北朝鮮問題を管理すると期待することは、韓国や米国の失敗となるだろう。韓国は、地域の安全保障に対する北朝鮮の脅威に共に対応していかなければならない。しかし、北朝鮮問題で韓国の国家利益を守る責任は、中国ではなく韓国にある。米国も然りだ。多くの点で米国と中国の利害関係は似ているが、全く同じではない。