経済学史上最も有名な論争は、19世紀前半、英穀物法廃止をめぐるリカードとマルサスとの論争だ。リカードの自由貿易とマルサスの保護貿易とがぶつかって、自由貿易が勝利した。20世紀に再び大論争が、ケインズとハイエクとの間で繰り広げられた。ケインズは、国の積極的な市場介入を、ハイエクは、可能な限り市場に任せることを主張した。最初は、ケインズ主義が勝利したかのように見えたが、結局、ハイエクの新自由主義が勝利した。
◆2008年、グローバル金融危機後、新たな論争の構図が形成されている。ポール・クルーグマンとジョセフ・スティグリッツが片方に、グレゴリー・マンキューがもう片方にある。昨年、トマ・ピケティの「21世紀の資本」が英訳され、戦線は、クルーグマンの支持を受けたピケティとマンキューとの間に広まった。ピケティとマンキューは最近、米ボストンで開かれた米経済学会年次学術総会でぶつかった。ピケティは、主要先進諸国の300年間の租税資料を分析し、富の少数者への集中について証明したが、マンキューの回答は、「だからどうした?」だった。富の不均衡は、経済的貢献の当然な見返りだという。
◆ピケティよりずっと前に、ピケティより一際有名だった経済学者がフランスにいた。ジャン=バティスト・セイだ。セイの法則は、供給が成されれば、需要は自然に生まれることになり、供給過剰はあり得ないということだが、リカードとマルサスとの論争でも、ケインズとハイエクとの論争でも、セイへの立場がその背景にある。マルサスとケインズは、セイの法則を否定している。資本主義は、放っておけば供給過剰によって危機に陥ることを認めたものであり、このことを最後まで推し進めた人は、ほかならぬマルクスだ。
◆ピケティの本のタイトルは、マルクスの「資本論」のパロディーだったが、革命は主張していない。富裕税課税などの政治的介入で、富の少数者への集中を食い止めることができるという。ただ、富裕税は、一国だけで課すことになれば、金持ちは別の国に行くことができるため、彼が主張したのは、グローバル富裕税だ。一方、マンキューは、一個人の富は世代を経ながら分散され、減ることになり、自然に平均値に近づくと見ている。簡単にどちらか片方の肩を持つのは難しい。だから、論争は続くものなのだ。
宋平仁(ソン・ピョンイン)論説委員 pisong@donga.com