日本の大企業、三菱マテリアルが、日本企業で初めて第2次大戦中に強制労働に遭った元米国人捕虜に公式に謝罪した。しかし、韓国人徴用被害者に対する謝罪はなかった。
19日、三菱マテリアルの木村光常務執行役員をはじめとする会社代表団は、米ロサンゼルスに位置する米ユダヤ人人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」で、元捕虜と遺族らを招待した行事を行った。この席で、木村常務は、元捕虜として唯一参加したジェームズ・マーフィーさん(94)に謝罪の言葉を直接伝え、頭を下げた。
木村常務は、「マーフィーさんら米国の元捕虜と遺族に心から謝罪する」とし、「道義的責任を痛感している」とし、「このような不幸な出来事を二度と起こさない」と話した。09年と10年に日本政府が米軍捕虜の問題で謝罪をしたことはあるが、彼らを鉱山や工場で奴隷のように働かせた日本企業が謝罪したのは今回が初めて。
フィリピンで日本軍の捕虜となり、44年からの1年間、日本の銅鉱山で強制労働させられたマーフィーさんは、捕虜生活について「食事、薬、服、衛生を全く提供されない奴隷の暮らしそのものだった」と振り返った。そして、「われわれ捕虜は70年間、この謝罪を待ちわびていた」とし、「三菱の謝罪には金銭的な補償はないが、心からの謝罪と考える。私が三菱の謝罪を受け入れたことが、長年の問題を解決することを願う」とし、木村常務と和解の握手を交わした。当時、三菱鉱業(三菱マテリアルの前身)で強制労働させられた米国人は現在2人が生存している。同日の行事にはマーフィーさんだけが参加した。行事を主催した同団体のエイブラハム・クーパー副所長は、「今日は歴史的な日だ」とし、「他の日本企業もこれに賛同して謝罪することを望む」と話した。
AP通信によると、第2次大戦中、米軍捕虜約1万2000人が日本に連行され、日本政府や企業が所有する約50ヵ所の労役場で強制労働させられ、このうち1100人以上が死亡した。特に、三菱鉱業の4ヵ所の鉱山で、米軍876人を強制労働に遭い、このうち27%が死亡したと、ニューヨーク・タイムズ紙が19日付で報じた。
三菱マテリアルの謝罪は、来月発表される安倍晋三首相の終戦70年談話を控え、米国での友好的ムードづくりのためという観測も流れた。AP通信は、「国民と野党の反対にもかかわらず安全保障関連法案を強行処理した安倍首相が、戦後弱まった軍事力を回復するために、戦争の悪行を整理し、隠そうとしている」と分析した。駐米日本大使館側は、「今回の謝罪は、三菱マテリアルの単独の決断であり、日本政府は関与していない」と明らかにした。
しかし三菱マテリアルは、韓国と中国の元徴用工に対する謝罪はしなかった。これについて木村常務は、「他国の元徴用工に対しても謝罪を検討できるし、韓国人強制徴用工について言及しないことに特別な意図があるわけではない」と説明した。
行事が終わって木村常務は、「韓国と中国に謝罪する計画はないのか」という記者団の質問を受け、「第2次大戦中の強制徴用に関する訴訟が進められているため、係争中の案件のコメントは控えたい」と述べ、従来の態度を繰り返した。
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