死ほど確実なことがあるだろうか。理由と時期が異なるだけで、人は誰でも必ず死ぬ。それでもすべての死が悼まれるわけではない。19世紀の英国の画家、ブリトン・リヴィエールが描いた絵には、死者だけがいて死を悼む人はいない。犬が1頭いるだけだ。なぜだろうか。
ビクトリア時代に活躍したリヴィエールは、17歳の時からロンドン王立芸術院で展示されるほど優れた才能の持ち主だった。リヴィエールは神話や歴史の絵にも優れていたが、動物画家として名声を得ていた。特に人間のような表情をする犬の絵で人気を呼んだ。リヴィエールが48歳の時に描いた絵には、中世の鎧を着た男が青いシーツが敷かれたベッドに横たわっている。胸の上に花が置かれていることから、彼はすでにこの世の人ではない。ベッドの横にいる犬は、哀悼の目で彼を眺めている。この犬はブラッドハウンドで、欧州の王室や修道院でよく飼われた貴族の血統の猟犬だ。題名の「Requiescat」は「安息」というラテン語で、死者の鎮魂を祈ることを意味する。今この犬は飼い主の死を悲しむ唯一の喪主なのだ。この絵は完成するとすぐにその年に王立芸術院に展示され、絶大なる賛辞を受けた。騎士道の精神と忠犬の献身は、ビクトリア時代の人々が好きなテーマだったからだ。人気を証明するかのように、画家は翌年、この絵の複製画を2点も描いた。
騎士道は、中世の欧州で成立した理想的な行動規範だ。騎士が守らなければならない主な徳目は勇猛、忠実、名誉、寛容、礼儀、弱者保護などだった。ところが、中世の封建社会がそのような理想的な社会だったはずがない。武器や鎧を独占した騎士はむしろ騎士道に反する不道徳で暴力的な行為を日常的に行った。絵の中の騎士も、それほど騎士らしいことはできなかったようだ。家族、仲間、隣人など誰も死を悼む人がいない。忠犬だけが彼の最期を看取っている。