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刑事訴訟法の改正が生んだ奇妙な法廷光景

刑事訴訟法の改正が生んだ奇妙な法廷光景

Posted September. 22, 2023 08:50,   

Updated September. 22, 2023 08:50

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2010年12月20日、ソウル中央地裁刑事合議22部の法廷。建設施工会社のハンシン建営代表のハン・マンホ氏から不法政治資金9億ウォンを受け取った罪で起訴された韓明淑(ハン・ミョンスク)元首相の1審公判が開かれた。当時、法曹チームの所属だった筆者は、韓氏の1審裁判を法廷で取材した。

この日、2次公判に証人として出席したハン代表は、韓氏にカネを渡したのかという検察の質問に対し、「いかなる政治資金も提供したことがない」として、検察で作成した供述調書の内容を覆した。

法廷はざわついた。韓氏側からは嘆声が上がり、韓氏の側近として一緒に起訴されたキム某氏は、被告席で失神して救急車に運ばれた。裁判長が何度も怒鳴りつけてから、法廷はようやく静かになった。

韓氏側の弁護人が出て、「なぜ8ヵ月ぶりに供述内容を変えたのか」と質問した。ハン氏は、「私の虚偽の供述で、尊敬の対象だった韓元首相がソウル市長選挙で落選し、起訴までされた。罪悪感で命を絶つことも考えたが、このまま死んだら韓元首相の濡れ衣を晴らすことはできないと思い、今日を指折り数えて待っていた」と涙声で話した。

ハン氏が供述を覆したことで、韓氏は1審で無罪を言い渡された。しかし検察は、ハン氏の「法廷での供述」より「取調べに対する供述」が事実関係により合致することを法廷で立証していき、ハン氏を偽証罪で起訴した。結局、控訴審裁判所は、「ハン氏の供述が覆されたとしても、他の証拠によって疑惑が認められる」とし、韓氏に懲役2年を言い渡し、最高裁も原審を確定した。

13年が経った今、サンバンウルグループの対北朝鮮送金事件で起訴された前京畿道(キョンギド)平和副知事・李華泳(イ・ファヨン)被告の裁判では、似ていながらも違う光景が繰り広げられている。李華泳被告は検察の取調べでは対北送金の事実を最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表に報告したと供述したが、最近裁判所に提出した意見書では「検察から持続的に圧迫を受けながら、李代表がかかわったかのように一部で虚偽の供述をした。李代表にいかなる報告もしたことがない」と否定した。

李華泳被告が覆した供述を維持すれば、検察の供述調書は紙切れになる。かつては、被告が供述調書を裁判で否認しても、適法手続きなど一定の要件さえ満たしていれば証拠として認められた。しかし、昨年1月に改正刑事訴訟法が施行され、被告が裁判で認める時に限って証拠として採択できるようになった。検察は李在明氏側が調書を無力化し、李在明氏を狙った捜査を遮断するために、李華泳氏を懐柔し、「司法妨害」を試みたと見ている。

妻との葛藤や弁護人選任問題で1ヵ月以上空転していた対北朝鮮送金の裁判は、供述の覆しと司法妨害を巡る議論が続き、再び原点に戻った。今年3月、李華泳氏が外国為替取引法違反で起訴されてから6ヵ月が経っても、事件の解明が足踏み状態だ。法廷での供述を最優先にし、公判中心主義を具現するという趣旨は良いが、検察の供述調書がこのように簡単に証拠能力を失うならば、裁判は限りなく長引き、実体的な真実解明も遅くならざるをえない。施行から2年になるだけに、制度的補完策はないか、国会と政府が膝を突き合わせる時点だ。