「三菱自動車は誤った道を走ってきた」
最近、日本は三菱自動車が消費者からのクレームを隠していた事件で連日騒がしく、三菱は情け容赦なく非難され続けている。三菱は日本を代表する企業グループの一つであるだけに、日本人のプライドも傷ついている。三菱を非難する際に使われている「長期間」「組織的」という表現には、日本人の怒りが凝縮されている。
自動車会社はクレームが届けられると、リコール(無償修理)を実施し、その事実を運輸省に報告しなければならない。しかし、三菱自動車は二重帳簿を使ってまでクレームを隠してきたのである。
それも個人的に行われたのではなく、重役までも「クレームが多いと、企業のイメージダウンにつながる」としてこれを幇助してきたのである。隠し通してきた期間も30年にのぼる。企業のモラルハザードがどこまできているかを明らかにする代表的な例である。
今回の事件が表面化したのも、司法当局や運輸省の調べによるものではない。匿名の内部関係者が、良心の呵責に耐え切れず知らせてきたのである。
三菱自動車は、22日記者会見を開き、一部の過ちを認めた。そして、警察は27日、電撃的に会社の事務室と重役の家宅捜査に踏み切った。予想外に迅速な捜査着手であった。運輸省も、来月、今回の捜査結果をもとに三菱自動車を刑事告発するにちがいない。およそ社長を始めとする役員の退陣は避けられないだろう。
警察がスピーディに捜査を始めた背景には、日本経済界が抱えている悩みが垣間見られる。雪印乳業の食中毒事件からもわかるように、最近、日本企業の最大の自慢である「職人としての気構え」が薄くなっているのである。それに企業倫理までも廃れてきたら、日本経済界の未来は決して明るいとは言えないだろう。日本の捜査当局が三菱に圧力をかけているのも、揺るがされている日本経済を何とか立て直そうとする動きの一つである。