国内の政治や南北関係において、金大中大統領の現実認識に問題があるのではないかという懸念の声が高まっている。
この度、与党・新千年民主党の初・再選議員13人が集まり、議論した内容のポイントも、結局は金大統領が現在の危機を正しく認識していないという事である。これらの議員はハンビッ銀行の不法貸出疑惑や医薬分業実施に伴う混線、それによる国民の不便、国会法の単独可決、党指導部の無気力と無責任などを強く批判した。このように混乱極まりない国政と乱脈状況が解決されないのは、結局与党の総裁である金大統領が現実を正しく判断できていないためではないかという話である。
ところが、大統領官邸(青瓦台)側は、そのような認識は状況認識の不足による配慮の欠けた発言であると一蹴している。金大統領はすべては国会法に基づき、調査結果に基づいて処理すべきだというように、原則論を固持しているという。しかし、今の状況からしてそのような原則論だけでは済まされないと見られる。
それだけでなく最近の金大統領の発言をみると、南北問題に関する認識にも改めるべき点があるのではないかと思われる。民族の念願を叶えようとする大統領の意欲と熱意は高く買うべきだが、南北関係の実情やそれに対する世論をもう少し冷徹に見極めるべきではないだろうか。
金大統領が民主党幹部の定期報告会議で、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)はこれまで掲げていた在韓米軍の撤退、連邦制度の実施、国家保安法の廃止など3つの前提条件を取り下げた。北朝鮮が譲歩したのである、と発言したが、これだけを聞くと、まるで私たちが北朝鮮に大きく譲歩されたようにおもえる。しかし、北朝鮮はその三つの事に関する立場の変化を公式的に明らかにしていないのである。
北朝鮮から譲歩してもらったというような認識で南北関係に臨んではバランスを失う可能性がある。そうでなくても南北接触の時期や場所の決定などで、ほぼ北朝鮮の主張が受け入れられている事から、韓国が北朝鮮に一方的に主導されているという批判の声も出ている。
今月14日発表された南北共同報道文で、金正日総書記への尊称や労働党の金容淳書記に対する一部での過剰な待遇も、ある意味では北朝鮮への偏った認識によるものではないか。
北朝鮮に対するそのような認識は、早急に何かを成し遂げようとする成果主義によるものだという懸念の声もある。締め切りに追われるように成果主義観点から臨んでは、後ろめたい結果を生み出すことになるだろう。