韓国とロシアが国交樹立して以来、10年間、ロシアは超強大国としての国際的地位を失った。のみならず、南北と同時に国交樹立している国としての有利な立場をうまく活用できず、いまだに朝鮮半島においては周辺部としての役割をしているに過ぎない。
しかし、いまやロシアは朝鮮半島に対する積極的な政策を模索している。若く精力的な40代のプーチン大統領は、強力な中央集権化を通じて国内の政治を安定させている。ロシアの経済も去年からプラス成長に転じている。国家主義的色彩の強いロシアでは常に強力な専制権力の存在が国家の力を象徴していた。プーチン大統領は、このような歴史・文化的伝統と国民的情緒を基に権力を握ったのであり、これを基盤に「強いロシア」政策を進めているのである。財閥と地方政府を飼い慣らし、税収確保に成功し政治・経済的安定を確保しているので、積極的な外交政策を進めることができるのだ。
旧ソ連時代以来、ロシアは北東アジアで非常に肩身の狭い思いをしてきた。ロシアと日本の関係は、北方領土でギクシャクしており、ロシアと中国の戦略的協力は中国によって主導されてきた。こうして、現状打破の政策を取るしかないロシアとしては北東アジアで新たな突破口を見つけなければならない。
現在、朝鮮半島の情勢は南北首脳会談以降造成された新たな変化により、非常に流動的であり、ロシアとしてはこれまでの域内での滞りや劣勢を乗り越える突破口に活用できるだろうと判断している。
7月ロシアのプーチン大統領が、旧ソ連とロシアの最高指導者としては初めて朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を訪問したのもこれらの理由が背景になっている。それは、10年間ロシアを疎かにしてきた韓国政府への圧力としても作用するということから二重の効果を上げられる。
南北首脳会談以降、朝鮮半島の情勢のポイントが、北朝鮮の核やミサイル問題とそれを解決するための米朝交渉から南北対話に移り変わったことで、アメリカの役割と立地が縮小した隙間をロシアは見逃していなかったのだ。金正日総書記のいいかげんな発言で一騒動はあったが、プーチン大統領が沖縄で開かれたG8首脳会談で北朝鮮のミサイル代替発射について発言したのもそれらの理由からだ。
今後ロシアは朝鮮半島のさまざまな問題解決の過程で積極的な役割を模索し、北朝鮮もこれを積極的に取り入れ、また要請するはずだ。
それは北朝鮮としてもロシアとの関係発展を通じて得られる外交・軍事・経済的利益が少なくなからず、アメリカに応対するためのカードとしてロシアを活用できるからだ。8月末、北朝鮮が日朝国交樹立交渉の場所としてモスクワを強く主張したのは偶然ではない。
さらにプーチン大統領は極東シベリア開発に深い関心を示している。これは西シベリアの石油がすでに6割も採掘された中、東部地域の開発は重要な課題になっているだけでなく、欧州諸国ではなくユーラシア国家としてのアイデンティティの確立に直接関係があるためだ。ロシアは南北の鉄道連結を通じての「鉄のシルクロード」構想やアジアガス管埋設事業に積極的に臨むほかないだろう。
ロシアは朝鮮半島の問題解決において新たな変数として舞台に登場してきた。10年前、私たちはロシアと国交正常化し、北朝鮮へのロシアの役割を期待したが、ソ連崩壊とともにロシアの立地は急激に縮小された。そしてロシアへの私たちの認識も冷淡になったのである。
ロシアは地球の反対側にある遠い欧州の国ではない。現在、北朝鮮を国境を並べており、統一されれば統一韓国の隣国になる。私たちはこれまでロシアを粗末に待遇しすぎてきたのではないだろうか。世界最大の領土をもち、資源の宝庫でもあるロシアの価値を改めて認識してはいかがだろうか。
ましてやロシアは南北関係の持続的な発展を保障する役割をになうこともできる。ロシアは現在の南北関係の発展に満足しており、その中で自分の役割を徐々に拡大していくはずだ。そうして、ロシアは今後の北朝鮮の態度の変化の可能性を前もって牽制することもできるだろう。南北関係の発展のための保険として、韓国とロシアの関係発展を積極的に模索する必要がある