フォードが大宇自動車の引き取りを断念し国内経済を動揺させたかと思うと、今度は韓宝(ハンボ)鉄鋼を引き取ると言っていたネイバス・コンソーシアムが解約の意思を表明し、我々を驚かせた。97年末の外貨危機の発端となった韓宝事件が思い浮かぶだけに、この売却失敗はなおさら不安で衝撃的な出来事と見られている。
二つのケースとも、契約を一方的に破棄した当事者に対して、いかなる法的責任も問う事ができないようになっていることは、大変失望的なことだ。金大中大統領も指摘したように、大宇自動車の場合、契約内容をしっかりと確認しなかったためにフォードに良いようにされた。はじめに入札保証金を受け取るなり損害賠償に関する規定を仮契約の形ででも確保していたとすれば状況は違っていただろう。ハンボの場合もやはり一方的に契約破棄をされながらも、違約時の制裁条項を準備していなかったため、解約による不利益を全部こちらが負担することになった。
さらに我々を憤慨させるのは、良いようにもてあそばれながら抗議の一つも満足にできないという点だ。フォード社は、単純に優先協商の対象だっただけで、当事者の間で正式に拘束力のある契約を締結したわけではないため、途中で何かあったらいくらでも手を引くことができるようになっている。そのように契約を進めたのはフォードの能力であるし、国際商取引の厳然たる現実だ。協商する上で実力が足りない方が損失を受け入れなければならず、その負担をまた国民が公的資金という形でまかなわなければならないという事実に虚脱感すら感じる。
二つのケースとも売却が白紙に戻った後の対策や安全装置をまったく準備していなかった点は、切実に反省すべき部分である。今回の痛切な経験を教訓とし、国際商取引における協商力を身につけた専門家の養成にさらに力を入れることも、同じ失敗を繰り返さないための道である。中途半端な国内慣行から脱却し、冷酷な国際慣行に適応する訓練も要求される。
いま一番大事なことは、大宇自動車とハンボ鉄鋼の今後の処理方案だ。にもかかわらずチン・ニョム(陳稔)財経省長官率いる経済チームと債権銀行団が当惑の余り、売却時限を急いで発表して自ら足かせを付けたり、露出してはならない心中をあらわにするなどの失敗が相次ぎ、国民を不安にさせている。
どうせ最悪の状況になってしまった以上、この件を「災い転じて福となす」ための機会と受け止め、企業価値を高めて「叩き売り」を避ける方向に戦略を修正する方案も研究するべきだ。
政府と債権団は失敗を繰り返さないように、考えられる限りのあらゆる代案を原点から検討してほしい。