「『経験もない人がどうやってラブストーリが書けるのか』とお聞きですか。経験より想像力と感情がより重要です」。
38才のオールドミス(独身女性)。オールドミスに対する社会的な認識が否定的だが、彼女は結婚する気が全くないがために一人で生きていく女性だ。
漫画家のキム・へリン氏。今年彼女の作品「ビチョンム(飛天舞)」が映画化されたことから、より有名になった作家。しかし彼女の作品「北海の星」を読んだ386世代(60年代の生まれで80年代に大学生活をし、現在30代の人)の間では、 すでに有名な漫画家として知られているスター作家である。
彼女の漫画には「運命的な愛」のため、命をかけて苦境を乗り超えていく女性が必ず登場する。彼女はまだ「運命的な愛」に出会えなかったのか。
「私自身が漫画で見られる主人公のように愛のために全てをかける人になるのは難しそうです。現実では難しいことが、そのような愛を心のなかで希望する読者が多いため、違和感を感じず私の漫画が受け入れられていると思われます。全ての人の愛には、運命的な要素があります。そうした部分を漫画では想像力を発揮して表現できるから、より運命的に演出できるというわけです」。
しばらくの間休みを取った彼女は最近、再び忙しくなった。古代の遊牧民を背景とする「火の剣」が2年ぶりに純情漫画雑誌「ホワイト」11月号から連載することになったからだ。
金氏はすでに「火の剣」の結末を構想済み。しかしその結末までの数多い運命的な愛や事件などを探し出すため悩む毎日を送っている。
金氏は18年の作品活動にしては少な目の作品を発表してきた。全部と言っていいぐらい歴史に基づいた真剣で深みのある作品ばかりです。歴史物だけを書く理由について「私の作品は『歴史』というよりは『史劇』に近いと言えます。通俗的であるからです。私の作品をおいて様々な分析がされていますが、単に歴史的な背景を扱うのが趣向に合うだけのことです」と話す。
金氏は「火の剣」のほかに「広野」という未完成作品もある。1920年代の日帝時代から解放以後の現代史までの話しで構成されるこの作品に対する作家の愛情が並大抵ではない。
「『広野』は短期間ではなく、何十年をかけてでも練り強く完成させていきたい。パク・キョンリさんの『土地』と似ている、という意見には恥ずかしさを隠せません。ただ、漫画ならではの特性を生かした本格的歴史物としてみなさんに評価されたいです」と語った。
徐廷輔(ソ・ジョンボ)記者 suhchoi@donga.com