それでもまさかと思った。旧国家安全企画部(現国家情報院)の選挙資金支援の件と絡んで、与党・新千年民主党のキム・ジュンクォン(金重権)代表を始めとする与党の中心人物らが捜査結果を全部知っているかのように話しても、それが検察からの情報ではないだろうと信じていた。そういう事からもこの件を政略的に利用してはいけないと、政治圏の自制を促してきた。
ところが検察に対する私たちの期待は一瞬にして崩れてしまった。96年4月11日の総選挙当時、安全企画部から資金を受け取った政治家のリストが、「検察の資料」という名でマスコミに公開された事をどう受け取るべきなのか。これはつまり、これまで検察が与党と緊密な協力をしてきた事を示している。
検察は安全企画部から資金を受け取った政治家のリストとその金額を、わかりやすく表にした事はないとし、出所が検察でないことを主張している。しかしながら、報道された内容は間違っていないともいっている。結局、検察がこれまで与党に知らせてきた捜査の内容が、どこかで表の形となり、これが外部に流出されたわけだ。問題の政治家とその金額の確認は、検察の調べなしではわからない事だからだ。
確かに、今回の捜査の流れを振り返って見れば、与党が深い意味なく鎌をかけた事が、数日後、検察が事実を確認するような形だった。いわゆる「安全企画部リスト」の確認説も、民主党のキム代表が初めて口外され、結局事実である事がわかった。検察としては説明の余地がない。
より深刻なのは、パック・スンヨン(朴舜用)検察総長自ら、「この件を政略的に利用してはいけない」として、厳正な捜査をすると話したその翌日、リストに載っている議員のほとんどが野党議員である問題のリストが公開された事である。検察の信頼は地に落ちてしまった。もはや誰も検察の捜査結果を信用しないだろう。
これまで検察は犯罪の事実が確認されていない事柄については確認できないとして、各種の不正や疑惑について口を閉ざしてきた。ところが、今回は検察も刑事処罰は難しいと見られる政治家のリストを発表したわけだ。検察が直接そのリストを公開したわけではないとしているが、これまでの事情からして責任を問わざるを得ない状況だ。
何回も強調したように、旧安全企画部が国の予算を選挙資金として転用した事実は許されない行為である。だが、検察がこの事件の捜査において与党と事前に政治的調律をしてきたのであれば、これは国の綱紀という次元から、予算の横領以上に深刻な問題である。検察は今からでも捜査の内容を透明にし、検察としてのありようを改めるべきだ。