ベクリョン島は近いが馴染みのない島だ。島から最も近い陸地である黄海道(ファンヘド)ジャンヨン地との距離は僅か10km余り。海の向うに島が見え、住民の息遣いさえ聞こえてきそうだ。日の出の頃には「ジャンサン(長山串)で鶏が鳴く声が風に乗って聞こえてくる」との奄燉揄偓ナきる。しかし、今日のぺクリョン島は仁川(インチョン)港から200kmの船道に沿って行かなければならない遥か彼方の島だ。時速40ノットの超快速船でも約4時間以上かかる。
ペクリョン島の代蕪Iな観光地はすべて海に集まっている。特に北のジャンサンと向かい合っている海岸は「西海の海金剛(ヘグムガン)」と呼ばれる程その姿を絶景を成す。ここには長い歳月の間強い雨風と波に削られた船台(ャ塔f)岩、屏風(ビョンプン)岩、兄弟(ヒョンジェ)岩など、署l署Fの岩が数百mも並んでいる。奇妙な形をした岩と青く澄んだ海が絶妙な調和を成し、そびえ立つ奇岩と削ったような岸壁が、まるで大軍に号令をかける将軍のように堂々としている。頭武津(トゥムジン)という地名も「そびえ立つ岩の形が将軍の頭のようだ」として、つけられたという。ペクリョン島に行ってきた人のほとんどは一番印象に残った場所として、この場所を挙げている。
旅客船が出入りするヨンギ浦の南側のサゴッ(砂串)海水浴場は、世界的に2ヶ所しかない「天然の飛行場」ということで有名だ。傾斜の緩やかな幅200mの白い砂浜が3km程続くが、コンクリートのように固い。そのため自動車が通ることがほとんどなく、非常時には飛行機が離着陸することができるように設計された。砂浜の裏には松林がうっそうと茂り、夏になると海水浴を楽しむために陸地からやってきた海水浴客で賑わう方だ。
トムジン、コントル海岸など天恵の名所・・・沈清伝(シム・チョン伝という韓国の有名な説話)の舞台、カナリ(イカナゴ)液塩辛で有名なジュンファ洞の「コントル(豆石という意味)海岸」もぺクリョン島の見逃せない名所の1つだ。この地の石は大きさや色が黄色い豆とよく似ているためこのような名前が付けられたが、歩く度に聞こえてくる「キコキコ」という音と足の裏に伝わる感触が愉快でもあり爽快でもある。
「沈清伝」の舞台としても有名なペクリョン島は、長い間黄海道に属する島だった。しかし韓国戦争以降、黄海道の甕津(オンジン)半島が休戦線の北部に含まれてしまうと、京畿(キョンギ)湾に散らばる幾つかの島と共に京畿道の甕津郡になった。
ペクリョン島は島であるにもかかわらず、漁民は全体住民の約9%にしかならないが、その反面、農民は約47%にも上る。これは「1年の農業で3年は暮せる」と言われている程土壌が肥沃であり、よく耕されているためでもあるが、何よりも漁労水域と漁労時間の規制が厳しく、漁業よりは農業の方が収入が良いからだ。
しかしぺクリョン島周辺の海はほとんど汚染されていない清浄海域であるため、他の地方の海産物よりも同地の海産物がきれいで味もウマイという。イカナリ、ヒラメ、ウロク、アワビなどがたくさん捕れるが、特にカナリが有名だ。カタクチイワシの親戚にあたるイカナリは、きれいに洗った後、塩辛に加工されるが、ペクリョン島の港と港町ではどこへ行ってもカナリを発酵させているプラスチックのつぼが並ぶ光景を見ることができる。
このようにペクリョン島は海岸の景色が美しいだけでなく、「沈清伝」と関連した説話が伝わる場所であるため、昔から観光地としての条件を整えていた。それにもかかわらず、これまで観光地として有名にならなかったのは、交通が不便なだけでなく、軍事的な理由で出入りと観光が制限されていたからだ。そのため1992年まで外地からの観光客はほとんどいなかった。しかし、1992年に時速40ノットの快速船が就航してからはペクリョン島に訪れる観光客の数が毎年増加している。
しかしぺクリョン島は今なお、普通の観光地のように気軽に出向ける場所ではない。特に冬場は島内での交通も不便極まりない。また霧が濃く、波が高い日には、短くは1日〜2日、長くは10日以上も島を出られない事がある。
△宿泊施設・食堂
天然滑走路のあるサゴッの韓国通信の隣にあるサゴッ冷麺(836-0059)は冷麺の味が良いことで有名な店。冷麺の麺とコミョン(上に乗った肉など)、おかず類には繊細さが感じられないが、冷麺の味だけは逸品。イカナリ液の塩辛で味付けしたスープの味にコクがあり、後味はさっぱりしている。水肉(スープの出汁をとった肉の薄切り)の肉質も適当に脂が乗って柔らかい。そば粉をたっぷり使った黄海道式のマッククスもこの店の名物だ。
トゥブジンのャ塔fすし屋(刺身専門店・836-0755)もぺクリョン島では有名な美味しい店だ。
ジンチョン(鎭村)里の文化モーテル(836-7001)梨花ジャン(836-5101)グリーンパーク(836-5551)など小ぢんまりとした旅館が多数ある。
△交通
仁川→ぺクリョン島:セモ海運(884-8700)のデモクラシー5号とペガサス号、ジンド運輸(888-9600)のベクリョンアイルランド号が冬場(10月21日〜翌年3月14日)には1日2回(7:40、12:40)出航する。小青(ャ`ョン)島と大青(デチョン)島を経由し、ペクリョン島までは4時間〜4時間30分程かかる。ペクリョン島発の仁川行きの旅客船の出港時間も同一。