「新しい歴史教科書をつくる会」が執筆した中学歴史教科書が文部科学省の検定に合格し、教科書問題を巡る論争は「第2ラウンド」に差し掛かった。どれだけの中学校でこの教科書を採択するかという「採択競争」が繰り広げられる。
「つくる会」側と彼らを支援する外郭団体はできるだけ多くの中学でこの教科書を採択するよう総力戦に入っており、一部市民団体と知識人たちはこれを阻止しようとしている。
合格判定を受けた出版社は5月中旬まで教科書の見本を作り、文部科学省に納本した後、7月の1カ月間全国470の地区別に教科書展示会を開く。8月頃に、公立は各地域教育委員会が、国立や私立は学校長がそれぞれ来年4月の新学期から使用する教科書を最終決定し、出版社に注文する予定だ。
「つくる会」側は検定作業が進められている段階から既に合格を前提として「地ならし作業」を行ってきた。全国に48カ所ある「つくる会」の支部やこの団体を支援する「教科書改善連絡協議会」などは、そのほとんどが県議会に「教科書を決定する際、現場の教師の意見より教育委員会の判断を優先すべきだ」という内容の陳情書や請願書を提出している。3月中旬現在、北海道と30の県の31カ所の広域議会が彼らの主張を受け入れた状態だ。
「つくる会」の高森明勤事務局長は陳情書などを提出した理由について、「公立学校の教科書採択権限は教育委員会にあるにもかかわらず、実際は教師が決定し、教育委員会はこれを追認する事例が多かったため」だと主張した。しかし実際の背景は自分たちの作った教科書がより多く採択されるようにするには、一人ひとりの教師を説得するより教育委員を説得した方が簡単であると判断したためである。
「つくる会」の会員たちはこれとともに会長の西尾幹二電気通信大教授が執筆した「国民の歴史」という本を教育委員や一般の人々に無料で配布した。右翼の見方を代弁するこの大衆書籍は今回検定を通った問題の教科書の「元本」にあたる。
「つくる会」側は自分たちが執筆した教科書の市場シェアの目標を10%としている。現在中学歴史教科書のシェアは東京書籍が41.2%で最も高い。東京書籍を含めた4社が90%以上を占めている。今年の供給社は昨年より1社増えた8社であり、「つくる会」側が目標どおり10%のシェアを確保した場合、問題の教科書は普及率4位にのし上がる可能性が高い。
この教科書に反対する知識人や市民団体の対抗意識もしたたかだ。
ノーベル文学賞受賞者の大江健三郎氏は先月16日、「集いを設けた側が教科書採択過程で現場の教師の声を排すべきだとしたことに驚いた。これからも執筆活動を通じてこの教科書の採択に反対していく」と述べた。
東京大学の坂本義和名誉教授も、「この教科書が使われないようにするにはまず問題点を納得させるべきだ。間違った内容に関する資料集を第一線の教師や教育委員会に送る」としている。
またこれまで問題の教科書を検定で合格させてはならないと主張してきた団体である「子供と教科書全国ネットワーク21」は第一線の教師らに採択を反対する理由を盛り込んだパンフレットを配り、5月末まで数万人規模の反対署名を受ける計画だ。
どれだけ多くの中学校でこの教科書を採択するかは、日本社会の歴史の認識を計る物差しになるとみられる。
沈揆先(シム・ギュソン)記者 ksshim@donga.com