政府が現代自動車グループに対北事業を押し付けようとしたことは、はっきり言ってナンセンスなことだ。今回の件は、政府が企業の自律的活動を口では約束しながら、特定の企業に対し「この事業はするな、この事業をしろ」と介入する旧態が、依然として残っている事をはっきりと示した。
政府がそこまでして対北事業を続けなければならない理由は何だろうか。資本主義の論理に逆行してまで朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を援助しなければならない、国民の知らない特別な理由があるとすれば、政府はまずそれからはっきりとさせるべきだろう。
現代グループが現在深刻な経営危機に陥っている原因の一つが、無理な対北事業での「出血」がひどかったためだという事実は、常識である。にもかかわらず政府が、世界的に例のないほどの高い入山料を調整するなどの原因解決に乗り出さず、一企業にその負担を押し付けようという態度を取るのは、理解できない。万が一現代自動車に対してその負担に相応しい反対給付を提示していたとしたら、同様の論理が今まで対北事業をしてきた現代グループに対しても適用された可能性は否定できない。政府が国際的な非難を受けてまで現代電子と現代建設に対して例外的な金融支援をしたことに、世間が疑問を抱くのもそうした理由からだ。
すでに明らかなように、現代自動車の所有構造を見ると外国人の持分率が相当に高い。万が一現代自動車が政府の強権に屈服した場合、相当ややこしいことになると思われる。政府と現代自動車に対する外国人投資家達の信頼は急落するだろうし、事業による負担で企業が経営難に陥った場合、国内経済は再び危機を迎える可能性が高い。企業の存立目的は利潤の追求にある。事業性を判断するのは企業自らの分析結果によるべきであり、新規事業への進出も全面的に企業が独自に選択する事案である。現代自動車が政府の要求を拒否するのは当然なことであり、とても勇気のある行動と評価される。現代自動車は今後も同様の事案に対してしっかりと対処することを期待すると同時に、他の企業にも今後政府の不当な要求があった場合に、現代自動車の模範的な事例を参考にして欲しい。
いくら民族的な事業だからといって、政府がこのように処理してはならない。南北経済協力事業が破綻した原因を冷静に分析して合理的に対策を立てることが、政府が進むべき正道である。資本主義の市場論理に反する術数や変則的な政策には、国民は決して共感しないだろう。