施行後1年3ヵ月を迎える公務員開放型起用制の実績が、わずか15%で踏み止まっている。理由はともあれ現政権が改革という名の下、綿密な分析や対策もなしに体裁のいい空箱を打ち出した一例、という批判は避けられない。
これまで任用を終えた39の政府省庁と傘下機関の93の職務のうち、公務員経験者でない純粋な民間人が起用されたのは14のポストに過ぎないというのだから、開放型起用制は文字通りの「見掛け倒し」だったのだ。優秀な民間の専門家を採用し公職員社会の専門性や効率性を高める狙いだった開放型起用制は、本来の趣旨とはかけ離れた省庁内部の昇進人事や退職者にポストを与えるための「内輪の祭り」と化した。
このような結果となったのは、民間に職を奪われたくない公職社会における談合の雰囲気のほかにも、民間の人材を受け入れがたい様々な「現実的な条件」が作用しているためだという。民間に嫌われるような条件が新しく生まれたとでも言うのか、問い返したい。
民間部門に劣る給料水準に退職後の将来も危ぶまれ、ともすれば官僚社会の厚い壁にぶつかり「孤立される」ことを恐れる有能な民間の専門人材が開放型起用制にそっぽを向いているためだという。しかし、同制度を採択していなかったらまだしも施行後15ヵ月も経った時点では通らない言い訳だ。
公共企業は、と言うと、ため息が出る始末。ある時事週刊誌が先日報じたところによると、現政権になってから、政界から101人がいわゆる「天下り人事」で公共企業のポストに就いたという。しかも、相次ぐ世論の批判にも背中を向けたまま政界の天下り人事は止まることなく続けられており、近く任期満了を迎える60余りの公共企業の役員職にどれくらいの天下り人事が行われるか計り知れない。
さらに情けないのは、公共企業の社長を公正に選ぶため設けられたという推薦委員会制度も実は、政府が内定した特定の人を選任するための「茶番劇」だったという話が、同委員会に参加していた人の口から漏れていることだ。
このような状況でも、与党は過去の政権に比べると天下りは減ったと言い張る。しかし過去の政権では、経営には手を出さない「給料泥棒の理事長」が大半だった。それが現在は、直接経営を任され下手をすれば「企業を丸ごと潰しかねない社長」で、そのツケが回ってくるのは結局国民であることを、政府当局は自覚しなければならない。