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韓国の秘境ー江原道麟蹄(インジェ)のゴンべ嶺

韓国の秘境ー江原道麟蹄(インジェ)のゴンべ嶺

Posted May. 23, 2001 13:57,   

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ゴンべリョン(嶺)峠に向かう道中のジョンボン山ガンソンゴル(谷)は、「辺り一面が武陵桃源」といっても可笑しくないようなところである。渓谷の入口にある石橋を渡れば、ゴンべリョン峠の端に向かう道中の新緑の木陰を歩いているうちに、自然の中に溶け込んでいく自分を発見できる。

突然、頭の上に青空が広がった。渓谷を登る2時間の間陽射しを遮ってくれた鬱蒼とした森が終り、5月の暑い陽射しが首筋に照付ける。森の木陰が消えたということは即ち、山の端に辿り着いたことを意味する。緩やかな山道が急に険しくなった。空が広がるにつれ、山並み(稜線)が姿を現した。左手(南側)にホランイコぺギ(虎の鼻先)と、右手の小高いジョンボン山を結ぶ稜線。どうも不慣れなところだと思いきや、1本の樹も生えていないのっぺりした山並みのせいだろう。ところが、もう少し近づいてその稜線の実態を見れば、自ずと嘆声を洩らしてしまう。

「映画の中に出てきそうな所だわ。そう思いません?」

20日の日曜午前、ジョンボン山の南側ゴンべリョン峠の頂上(標高1099.4m)に登ったパク・カンハさん(22・徳成女子大学3年)は、切立った山並みに代わって峰の間に広がる穏やかな稜線の広い草原を眺めながらこう言った。

「サウンド・オブ・ミュージック」のフィナーレで、マリアとトラップ大佐一家がアルプスを超えるシーンに登場する草原を思い出したのだ。見渡すと、同行の皆も同じことを考えているらしく、草の上に座り込み「この広い野原いっぱい」に視線を投げ掛けては、思いに耽っている様子。

ゴンべリョン峠の端の主は風に違いない。稜線の反対側(西南方)からゴンべ谷を伝って登ってきた風は頂に至り絶頂を迎え、一時も休むことなく草原の上に吹付けている。その摩擦音が一見叫び声のように聞こえ、荒涼とした感じがするものの、感心なことは、このような試練の中でも芽を出し花を咲かせては地道に繁殖を続ける、あらゆる野の花の強靭な生命力である。「風より先に身を反らし、風より先に立ち上がる」野の花の賢さを知らずして、決してその答えを見出すことはできないだろう。毎年の5月(5ー15日)、およそ10日間にわたり、オレジ、ヒョンホセクといった野の花が一斉に咲き乱れて草原を埋め尽くす様は、実に壮観だ。

ゴンべリョン峠に咲く野の花を探して山道を登って行った。その道は深い山奥のガンソン谷沿いに続いている。奥地として知られる「ソルピバッ村」。チンドン2里村とは極めて近いところに位置している。ガンソン村を後にして渓谷へと続く小道を歩き、谷の奥に入って行った。目の前には全くの別世界が広がっている。2ヵ月も続いた干ばつで、他の渓流は何れも干上がっているというのに、ガンソン谷は様子が違っていた。

「冬に雪がどれだけたくさん降るか分かってないでしょうに・・・、ぜーんぶ雪解け水なんだよ」。ガンソン谷でゴムチ(オタカラコウ)を栽培している70代のお婆さんの話だ。数日前、ゼンマイを採りに山に登ったところ、まだ雪が積もっていたという。

ガンソン谷を抜けてゴンべリョン峠まで登ってきた。入山統制所ー頂までは4kmの距離。道中は谷川に沿って歩くことになるが、頂の手前の300m区間を除いては、70代のお年寄りでも歩けるくらい緩やかな道になっている。渓谷の入口で、ソウルから来た会社の同僚という4人の男女に出会った。最近「息子よ、躊躇するには人生は短すぎる」という本を出した(株)ハンオン出版社の社員たちで、チーム別のテーマ旅行中だという。トレッキングの経験があまりないように見えたが、1時間半で登り切った。

「風と水の音、そして鳥の声を聞きながら歩く森の小道。ガンソン谷では、このような自然と自分との一体感を覚えます。まるで自分自身が森の中の緑にすっかり染まってしまって、服を脱いで搾れば緑色の滴が落ちてきそうな気がします」。パク・シヒョンさんはトレッキングの間中、「達磨が東方に向かった訳は」という映画を思い出していたという。映画と森の雰囲気が似通っていたからだろう、とも言った。

森の木陰と渓谷を流れる水が涼しい谷の奥は、見渡す限り緑の世界だった。それは、よく見ると、ようやく芽を出した新緑の木の葉と草の葉が放つ鮮やかな緑が混じっている。中でも一際目を引くのは、背丈が50cmもあるワラビ類であった。群生地となっている処は、まるで「ジュラシック・パーク」という映画を思わせるほど、原始的な雰囲気が漂っていた。林道の傍には、たくさんの野の花が咲いていた。薄紫のゾルバンスミレの花、白い花びらの中に黒い斑模様のあるゲビョル花、白い花びらのバラム花、白い花が群れを成して咲いているキロンの木、蓮の花のように花軸が突き出たヨニョン草、茎の切り口から紅い汁を流す黄色い花びらのピナムル・・・。この森の中で緑に反旗を掲げているものは、時季を迎え、絶えず咲いては散っていく野の花だけである。

●ゴンべリョン峠生態ツアー・パッケージ=スンウ旅行社(02—720—8311)は、ジョンボン山ガンソン谷とゴンべリョン峠への生態ツアー(日帰り)を開催する。出発は27日と31日の2回。コースは、ジンドン里ソルピバッ村ーガンソン谷林道ーゴンべリョン峠草原ーセナドゥリ。料金3万5000ウォン(こども3万ウォン)。www.Seungwootour.co.kr



趙誠夏 summer@donga.com