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[オピニオン]北朝鮮の領海侵犯対策

Posted June. 05, 2001 11:44,   

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北朝鮮の貨物船3隻が、済州(チェジュ)海峡をたて続けに無断侵犯し、3隻のうちの1隻が、西海の延坪島(ヨンピョンド)近海の北方限界線(NLL)を越えて北側に通過したのに次ぎ、別の1隻が西南海の領海を侵犯するという事件が発生した。

南北関係が小康状態にあり、米国が対北朝鮮政策見直し作業の最終段階に入っている微妙な時点で、北朝鮮がなぜこのような行為に出たのか、その意図を正確に読み取ることは難しいが、おそらく経済・軍事・外交的な動機が複雑に作用したものと推測される。

まず、北朝鮮貨物船の領海侵犯は、済州(チェジュ)海峡の無害通航権を認めさせるための計算された抗議行動とも見られる。北朝鮮側が、済州島南方の公海を迂回して航海するのにかかる経費と時間を節約するには、済州海峡を通過せねばならない。北朝鮮は、南北対話を切望する韓国の立場を十分に活用し、かなりの経済的利益が期待できる無害通航権を韓国側に認めさせようと考えているようだ。また、北朝鮮の韓国領海およびNLL侵犯には、対米和平協定締結に向けた名分の蓄積と今後の米朝対話の再開に備え、NLL代替問題を交渉のカードに使うとの狙いがあるものと分析される。このような観点から見ると、北朝鮮は、当面はひき続き韓国領海を侵犯し、韓国側の出方を見る一方、無害通航権行使の既成事実化を図っていくものと予想される。

北朝鮮の領海侵犯という突出行動に対し、韓国政府は「今後、済州海峡の通過を希望する北朝鮮貨物船が、韓国側に事前通報や許可要請などの必要な措置をとるなら、肯定的に検討する方針」であると伝えられている。政府の方針は、今回の事件が南北関係に悪影響を及ぼさないよう慎重に対応しつつ、南北対話再開のムードづくりのための配慮であると理解される。しかし、政府の措置が南北関係を考慮した苦肉の策であることは否めないが、満足できる水準であるとは言えない。これと関連して、北朝鮮船舶に対して国際慣習法上確立されている無害通航権を許可しても何ら問題になることはない、との主張も提起されている。しかし、それは南北関係が国際関係ではない特殊関係であり、さらに法的に休戦体制下にあるという点を看過したものだと言わずにはいられない。

これまで多国間条約規定や国際慣習法が、そのまま南北関係に適用されたことはない。南と北は常に特別合意によって懸案問題を処理してきた。大韓赤十字社の人道的援助物資や政府レベルの支援物資を輸送する際、北朝鮮領海を通過したことはあったが、それはすべて両者の合意によるものだった。金剛山(クムガンサン)観光が北朝鮮の沿岸航路を利用したのも同様だった。

さらに敵対的な対峙関係にある南北関係に鑑み、何の条件も付けずにただ事前通報や許可要請だけで無害通航権を認めることは不当であると言える。そのような行為は、韓国側の安保を脅かす落とし穴となる可能性があり、南北関係の発展にも何らためにならない。よって、政府が北朝鮮側に対し、相互主義の保証を求め、その条件の下でのみ北朝鮮側の無害通航権の許容を検討すると発表すべきだった。これまで北朝鮮は、北朝鮮領海を侵犯した韓国漁船を拿捕し、多数の船員を現在も抑留してきた。韓国の貨物船や漁船は、今後も北朝鮮側の周辺海域で拿捕される危険にさらされている反面、北朝鮮船舶だけが事前通報や許可要請だけで自由に韓国領海を利用できるということは、公平ではない。

政府は、今回の事件を契機に北朝鮮側に当局間対話の再開を要求し、交渉による解決を模索すべきだ。そのうえで無害通航権問題を相互主義の精神に基づき、韓半島周辺海域の平和的利用という次元から接近しなければならない。南北交渉では、東海の漁場の利用問題、 NLL水域でのワタリガニ漁の問題も共に論議できるだろう。

一方、NLL代替を含め北朝鮮が一方的に宣言した海上境界線問題は、南北基本合意書と付属合意書に明示されているように当局間対話を通じて解決しなければならない。それが実現するまでは、南北の海上管轄区域が尊重されなければならない。政府は、今後安保と南北協力、相互利益が互いに調和を保つ方向で無害通航権の問題を解決していくべきだ。より積極的かつ戦略的な対応が求められる。

ジェ・ソンホ(中央大教授・国際法)