「一生懸命働いたけど借金は膨らむ一方で、いくら頑張ってもどうしようもありません」。
異例の日照りで農民が苦しんでいる中、自然災害などによる借金を返済できなくなった農民が結局は裁判所から個人破産を言い渡された。
▲事例〓江原道鐵原郡(カンウォンド・チョルウォングン)で畜産業を営んでいた朴氏(44)は、15年前に地雷の爆発事故で両目の視力を失った。朴氏は1級視覚障害の身にはなったが、畜協から280万ウォンの融資を取り付け、農牛三頭を買い取り、身を粉にして働いた。
しかし、一頭は出産の途中で死んでしまい、もう一頭は家畜の伝染病で処分した。その上、冬の期間中の大雪で畜舎まで崩れ、残りの一頭と小牛を飼っていたが、牛の値段が急落し、飼料代さえ回収することができなかった。
朴氏はそれ以降、再び融資を受けてヤギ60頭を買い取った。しかし、相次ぐ野良犬の攻撃でこのうち50頭も被害に遭った。犬も飼ってみたが、やはり価格が急落し、いずれも捨て値で売りさばくしかなかった。
去年、妻も生活苦に耐え切れず家出をし、16歳と14歳の二人の息子とともに生計を立ててきた。しかし、借金はたちまち8000万ウォンあまりに増え、唯一の財産だった家まで手放した。にもかかわらず、借金は半分以上も残っていた。
朴氏は二人の息子を米国に養子に出さざるを得ない状況となり、結局今年初めにソウル地方裁判所の破産部に個人破産の届け出を出した。二人の息子は嘆願書を通じ、「目の見えない父が一人で老人ホームに入ることになった」と言い、「善処していただければ、一生懸命に働いて将来、恵まれない人々も助け、父の義眼もしてあげたい」と訴えた。
ソウル地方裁判所の破産3部(李亨夏=イ・ヒョンハ=部長判事)は最近、これを受け入れ、朴氏に個人破産を言い渡し、免責の申込ができるようにした。
▲個人破産の実態と原因〓ソウル地方裁判所の破産部に個人破産を届け出た人は、今年に入り、1月13人、2月18人、3月35人などと、去年に比べて2倍以上増え続けている。
しかし、朴氏のように農業、畜産業などに携わる人がソウル地方裁判所に破産の届け出を出して受け入れられた場合は、ここ数年間で朴氏が初めて。
個人事業者はもちろん、一般の消費者もクレジットカードの代金を支払うことができず、個人破産の届け出が急増しているのとは対照的に、負債にあえいでいる零細な農民の届け出はほとんど見られない。
破産部の関係者は、「農民のほとんどは農業を天職と思い、猫の額ほどの農地でも生涯の財産として手放さない傾向が強い」と述べ、「破産手続きに入ることになれば、所有財産の土地や畜舎なども処分しなければならないため、これをはばかるようになる」と分析した。財産より負債の方が遥かに多くても、生業を営むための基本的な土台は逃そうとしないわけだ。
また、破産部の他の関係者は「多くの農民が農家の負債で苦しみながらも、個人破産の制度が分からず、これを活かせないようだ」とし、「個人破産を届け出ても周りの親戚との間で連帯保証問題が複雑に絡んでいるため、身動きがとれない場合も多い」と述べた。
▲個人破産制度〓個人(消費者)破産は借金が財産を上回り、これを返済できない個人が裁判所の破産手続きに従い、財産を処分する制度。
その後、免責を申し込み、裁判所の審査と債権者の同意を経て免責の決定が下されば、残りの借金が帳消しされる。破産を言い渡された人は金融機関内部のルールにのっとり、融資を受けられないなど不利益を被ることになるが、裁判所に復権の申し込みをすれば、権利を再び取り戻すことができる。
李姃恩 lightee@donga.com