昔は釜山(プサン)からソウルまでの旅路は20日もかかったが、今は一日で往復できるようになった。また、昔の百姓はいつも人手不足に悩まされたが、今日は各種の農機具を利用して比較的容易に農作業ができる。現代人は過去に比べて、生涯の労働量が数十倍も多い反面、遥かに豊かな生活を営んでいる。労働量だけを基準に考えれば、確かに過去より数十倍も長い時間を生きていることになる。そのため、産業社会では機械をどう活用するかによって人の能力はもちろん、成功も左右される。産業社会における不老長生の不老の特効薬は「機械」ともいえよう。
いまは産業社会を経て、脱工業社会の情報化社会へと急変している。すべてのものが光速で動くデジタル革命の時代を生きているのだ。情報化時代には情報が全てだ。世の中には品物を安く買える方法、難病を治療する方法、珍しい品物を作る方法など、あらゆる情報が存在する。有用な情報をどれだけたくさん持っていて、どう管理をし、どう加工して、いかに利用するかで個人の運命が決まり、また国の競争力が左右される時代となった。つまり、情報化社会における不老長生の不老の特効薬は「情報」なのだ。
インターネットを活用すれば、時間と場所にとらわれず必要な情報を簡単に入手することができる。しかし、いまも多くの情報が文書の形で存在しているため、必要な情報を探し出して加工するには限界がある。人々がより多い情報を活用するようになるためには、広範囲な文書情報をデータベースで構築する必要がある。古文書をスキャニングして保管するといった保存のレベルではなく、内容を検索して活用できるデータベースを構築しなければならないのだ。
文字認識技術を利用すれば、本の中の文字を1秒当たり500字ずつ入力することができる。この技術は1950年代初めに研究が始まり、いまは文書認識機、犯罪に使われた車の取締まり、伝票認識、身分証明書認識など多方面にわたって活用されている。とくに最近開発された総合事務情報処理システムの「ハイトップス(Hi—TOPS)」は、公文書や書類など、各種の文書を1分当たり50枚ずつ入力でき、一旦保存すれば内容の中の単語を入力するだけで簡単に文書を呼び出すことができる。ファックスやメールで文書を数箇所に同時送信でき、簡単なコピーも可能で、またインターネット・サーバーとメールサーバーの役割まで全うする。
冷戦が終わり、戦争の脅威が無くなりつつあって、国防と治安に対する国の役割は減る反面、情報提供者としての役割はますます大きくなっている。情報の収集、加工、提供能力は、いまや為政者や政治リーダーが備えなければならない重要な徳目となっている。国と公務員は何よりも先進技法を取り入れ、長所と短所を先に把握して国民を啓蒙できる能力を備えなければならない。
広範な文書情報をデータベースに構築する国をあげての国策事業を進めるべきなのだ。有用な資料をデータベースに構築して容易に利用できるようにすることで、情報の生産性を高めることは世の中を豊かでゆとりのあるものにしていくための条件の一つである。
労働時間を少しでも減らして、少しでも多くの時間を人間らしい生活に当てるようにすることは、為政者と政治リーダーが追求しなければならない重要な義務だと思う。
イ・インドン(韓国認識技術代表取締役)