24日午前2時、巨済島玉浦(コジェド・オクポ)にある大宇(デウ)造船所。一時期は、労使紛争の象徴となっていた高さ120mの巨大なクレーンの隣では、暗闇の中で溶接の火花が散っている。
「受注した船舶の納期に間に合わせるため残業や特別勤務が毎日のように続いています。組み立ての現場は、交代勤務で週7日、一日24時間稼動しています」。
チーム長のイ・ジョンヨン船舶組立1部技員の声には活気が満ちていた。
玉浦の大宇造船所から車で15分くらいの距離にあるシンヒョン邑ジャンピョン里の三星(サムスン)重工業の巨済造船所第3ドック。長さ332m、高さ31mで、蚕室(チャムシル)のオリンピック総合競技場より広い超大型輸送船の仕上げ作業の真っ最中だ。船を作る作業は、おもちゃブロックを組み立てるように、それぞれの工程で鉄板の切れを貼り付けて作った「ブロック」をドックで組み立てる過程が進められている。ヤードには、組立てを待つブロックを積み立てる空間がないため、足球(競技方式はバレーボールと似ているが、ネットが低く、足と体だけを使う球技)場までの区間が野積み向けの空間として使われている。
三星重工業のソン・ビョンボク常務は、「昨年36億ドルを受注したが、今年は受注目標を28億ドルに引き下げた」とし、「注文がないからではなく、価格や納期、付加価値など『条件を検討して』収益性の高い船舶を中心に選別受注する方針に切り替えたからだ」と述べた。
今年、韓国の造船業は、3年連続史上最大の好況を迎えている。殆どの造船所が今後3年分の作業量を既に確保している状態だ。昨年に超大型輸送船(VLCC)や液化天然ガス(LNG)船、コンテナー船など全世界から押し寄せてきた注文量は、現代(ヒュンデ)重工業が547万GT(総トン数)、三星重工業459万GT、大宇造船408万GT。これら3社の1位から3位までの国内順位は、そのまま世界順位だ。
三星重工業の技術担当役員のキム・チョルニョン常務は、「韓国造船業者の競争力は、低賃金でなく設備と技術を基にしている」と言い、「今後10年間は韓国独走が続くと思われる」と予想した。日本には設備や技術の面で既に追い越しており、今ではむしろその格差が開き始め、中国は新しく投資したので韓国に追い付くにはまだ時間が掛かると見られている。
世界で2位、3位の造船業者が入居しているため、人口17万の巨済島は、世界造船産業のメッカとして位置づけられている。三星重工業、大宇造船と協力会社の職員2万5千名余りの賃金だけでも年間1兆2千億ウォン程。一ヵ月で約1000億ウォンだ。
おかげで巨済島は「不況無風地帯」だ。大宇造船の協力会社であるウォンウ・エンジニアリングのパク・サンベク代表は、「職員10名を新規採用しなければならないが、巨済島では人を探すのが難しい」と話している。大宇の職員であるイ・ドンチョルさんは、「月末には飲み屋は夕方から満席になるくらいだ」と言った。
工業団地に入居出来なかった納品業者が増えてから、鶏龍山(ケリョンサン)の麓の至る所が工場の敷地となって掘削されているのも急成長による現象だ。キム・ジェイク巨済市建設都市局長は、「工業団地の外で協力会社による乱開発が行われている」と言い、「中央政府に新しい工業団地を造成するための予算支援を要請したけど、答えがない」と語った。
巨済造船所の一番大きな悩みは、外国との競争ではなく、不安定な労使関係だ。23日、小雨が降っている中、玉浦造船所の現場では、「総力闘争」を訴える労組の檄文が貼られ、闘争速報紙が風に飛ばされていた。7回に渡る賃金交渉はまだ合意に至っていない。
大宇造船のイ・サン常務は「数日前にも労組執行部が全国民主労働組合総連盟と一緒に現場での集会を開いた。幸い10年近く大きな紛争はなかったがいつも緊張している」と言った。
kkh@donga.com