朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を逃れたチャン・ギルス君とその一家7人が中国北京市内にある国連難民高等弁務官(UNHCR)事務所で座り込みを始めて今日で三日目となる。
26日午前、UNHCR事務所に駆け込んだ「キルス君一家」は、予め用意していた荒縄で一家の体を一緒に縛り、毒物の入った瓶を持ち、「中国公安が私たちを引っ張り出そうと入ってきたら、自殺する」「私たちはもう死ぬことを恐れない」と言ったという。約4年にわたる北朝鮮からの脱出に疲れ果てたあげく、命をかけた冒険に踏み切った彼らに我々は深い憐憫を感じざるを得ない。
現在としては、彼らの要求が受け入れられ韓国への亡命が実現するかどうかの判断を下すのはまだ早い。UNHCR側では、彼らを保護する意志を積極的に表明するなど、前向きな様子が見られているものの、彼らの「運命」を決める中国の態度がまだ不透明だからだ。中国は今まで自国に亡命した北朝鮮住民に対して、一度も難民の地位を認めたことはなく、今度も「中国と北朝鮮の間には難民問題が存在しない」という最初反応を見せた。
しかし、我々は中国政府が、今回だけは他のいかなることより優先して、人道的な観点で扱ってくれるよう呼びかけたい。中国当局は、今まで北朝鮮からの亡命者問題を主権的な観点から、あるいは北朝鮮との関係だけを考慮に入れてきたが、それよりは人類普遍的価値である人権という視点から考えなければならないと思う。
こうした点で、もし中国がギルス君一家にとって「死の地」とされる北朝鮮に送還すれば、中国は国際的なイメージの面で受ける打撃も決して少なくないだろう。我々は、この問題の円満な処理を目指して、中国政府が黄長鎏(ファン・ジャンヨプ)元労働党書記を第三国に追放した前例を考慮できるのはないかと思う。
韓国政府も、ギルス君一家が韓国入りが果たせるよう、外交努力をつくさなければならない。政府はまた、今回の事件を機に海外に滞在している北朝鮮の住民に対するより積極的な対策作りに乗り出さなければならないだろう。我々が北朝鮮からの亡命者をどう保護し、支援したかという問題は、今後統一を進める過程やその後の韓国と北朝鮮間の社会統合に大きな影響を及ぼしかねない。
従って、政府は第三国との外交摩擦を恐れ、北朝鮮からの亡命者問題に消極的に対処するのではなく、脱出した住民を支援する民間団体との協力体制や支援策を講じる一方、第三国を転々としている住民たちが少なくとも身の安全を保障されるよう、該当国との舞台裏の交渉に積極的に取り組むべきだ。