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[オピニオン]感情の時計

Posted July. 10, 2001 10:04,   

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「ニーベルングの指輪」などで有名なドイツの作曲家リヒャルト・ワーグナー(1813—1883)の作品をイスラエルで演奏するのはタブー視されていた。ナチスは、宣伝・煽動・集会の時やユダヤ人収容所等で雄大なワーグナーの曲を集中的にかけていたのでイスラエルでは、かなり前からワーグナーを「過ぎた反ユダヤ作曲家」と見做していたからである。彼の音楽は、ドイツの民族主義を鼓吹させナチスのアドルフ・ヒットラーにユダヤ人虐殺の霊感を吹き込んだというのがイスラエル国民の情緒であった。

◆ワーグナーの曲がイスラエルで初めて演奏されたのは、昨年の10月だった。50年ぶりの解禁だ。騒ぎになったのは、当然の事だった。ホロコスト(大虐殺)で家族を失った人々は、1991年、ワーグナーの公演がキャンセルになったことを思い起こし、公演の中断を裁判所に提訴した。テルアビブの南にある小さな都市で公演が始まる瞬間、聴衆の一人がプラスチックのガラガラを振って音を立てた。公演中にも80才の老人が同じ動作で演奏を妨害していた。デモ隊がコンサートホールの外で抗議のポスターを展示し、印刷物を配布したりした。

◆そんなワーグナーの曲が一昨日はエルサレムで演奏された。イスラエル出身の指揮者ダニエル・バレンボイムが率いるベルリン・シュタツカフェレ・オーケストラの演奏だった。演奏は、バレンボイムの即興的な要請で行われた。本来、ワーグナーの音楽は演奏しないことになっていたが、バレンボイムは、公演の最後に聴衆にワグナーの曲を演奏したいという意志を伝えた。30分余りの論争の末に演奏は実現された。勿論、一部の聴衆の反対もあったが、大多数の聴衆が賛成し、演奏が終わった後、聴衆は立ち上がって拍手した。

◆イスラエルの聴衆がワーグナーの演奏を聞き入れたのは何故だろうか。芸術とイデオロギーは分離すべきだというバレンボイムの言葉も影響を及ぼしたと思う。しかも、ホロコストを忘れるのは不可能であるが、過去の傷を癒すために誠意を込めて努力するドイツの態度を受け入れるという考えが、イスラエルの国民の間に広まっているからだ。日本は、歴史教科書問題等で私たちを悩ませている。それが意識的なものであるかどうかは別として、大変残念なことである。私たちに感情の時計を逆に回せと言っているのか、或いは心の扉を閉めろと言っているんだか分からない。



dhyoon@donga.com