国際オリンピック委員会(IOC)のサマランチ会長の後を継いで、国際オリンピック運動をリードしていく第8代IOC会長選挙がジャック・ロゲ(59、ベルギー)の勝利で幕を閉じた。しかし、今回の選挙は、IOCが1894年発足して以来白人によって掌握されてきた会長のポストをめぐり、東洋人としては初めて金雲龍(キム・ウンヨン)大韓体育会長兼IOC執行理事が出馬して善戦したことで、世界に深い印象を残した。
特に、2008年五輪の開催地が中国北京と決まったことで、アングロ・サクソン系のIOC理事らが結束するなど不利な環境にもかかわらず、2次投票まで持ち込まれたことはIOC内部での金会長の位相を想像するのに十分だ。
金会長は、国家レベルの支援もなく、選手出身でないという弱点のために体育界の全面的な支持を受けることもできなかった。しかし、こうした状況下でヨーロッパのIOC理事らの後押しを受けたロゲ理事と「大権」を争ったことだけでも驚異すべきことだ。土壇場でのサマランチ会長の介入で会長職は逃したものの、韓国スポーツ外交の位相を一段階高めたと言える。
今回の選挙では敗北を喫した。が、IOC会長選挙は今後も続く。また、国際サッカー連盟(FIFA)会長選や国家オリンピック委員会連合(ANOC)、国際競技連盟連合(GAIF)、アジア・オリンピック評議会(OCA)会長選など、世界スポーツ界トップのポストは多い。特に、204カ国の加盟国を擁するFIFA会長は、「世界の大統領」という言葉になんら遜色のないポストである。鄭夢準(チョン・モンジュン)大韓サッカー協会会長のFIFA会長選出馬と善戦に期待してもいいだろう。
昨年末現在、国際スポーツ機構とアジアのスポーツ機構で活動している韓国人の役員は会長団、執行委員会、分科委員会を合わせてわずか137人。会長団の役員として活動できない機構が大半で、執行委、分科委で活動している役員もその数は少ない。活動している役員も語学や国際体育機構での経験不足で、主導的な役割を果たせずにいる。
今回のIOC会長選を終えて、韓国体育界は第2、第3のIOC会長候補を輩出し、また、選挙が迫っているFIFA会長選挙などで優れた韓国人候補が善戦する姿を見せるためにも努力しなければならない。もうこれ以上、国家に利益をもたらす選挙を個人的な努力だけで戦わせる愚を冒してはならないのだ。
そのためには長期的には学びながら運動する風土が造成されるべきだ。世界スポーツ機構で主導的な活動を見せている役員の大半が元選手でありながら、様々な職業を持っている。ロゲ新IOC会長も整形外科医だった。欧米ではスポーツマンは学識と身体的な均衡美を備えた紳士で通っており、社会に進出してもリーダシップを発揮する場合が多い。反面、韓国のスポーツ選手は真のスポーツマンでも、紳士でもない。勝利だけを追い求める風土がそうさせたのだ。こうした土壌では、優秀なスポーツ外交人材を育成することはできない。選手が引退した後スポーツ界で主導的な管理者の役割を果たすためにも、スポーツと学問を並行させなければならない。また、小さい時からスポーツの徳目を身に付けさせて、学校体育を正常化すべきだ。
短期的には五輪やアジア競技大会などのメダルリストらが国際体育機構で活躍できるように、素養と資質を養成するべきだ。メダルリストという強みは国際体育機構への進出を容易にするばかりでなく、スポーツに対する知識と経験があるために適応も早いはずだ。国家レベルでスポーツ外交専門人材養成システムを設けて、未来の人材を体系的に養成すべきだ。大学はスポーツ外交学科の新設を拡大し、国際体育機構で必要な実務を教育し、スポーツ外交学会も活発に行うようにしなければならない。
文化観光部、大韓体育会、体育科学研究院などの関連団体は、IOCをはじめ国際スポーツ機構で主導的な役割を担当している国のスポーツ外交人材を把握して、活動状況を調査し、国内スポーツ外交の方向と推進課題を設けることを促す。特に、ヨーロッパ出身のロゲ委員が新IOC会長に選ばれているだけに、ヨーロッパスポーツ界と親善関係を築き、彼らのスポーツ外交での力量を学び取らなければならない。また、外交通商部など政府組織とスポーツ関連団体らが情報と人との交流を活発に行えるよう、ネットワークを構築するべきだ。
イ・ヨンシク(体育科学研究院専任研究員)