［社説］中国政府の脱北者送還は、非人道的な処置

中国政府が脱北者を数十名ずつ、朝鮮民主主義人民共和国（北朝鮮）に強制送還しているという、先日のニューヨークタイムズの報道は衝撃的だ。我々が６月の「チャン・ギルス君一家亡命事件」の直後、憂慮していた脱北者たちに対する中国政府の強硬措置が、現実となっているようだ。中国政府のこのような措置は、一言で残念で非人道的な措置だと言える。

国際法は、「政治的な見解を理由に、虐待を避けて本国を脱出した人」すなわち、政治的難民のみを難民として認めているが、現在中国にいる脱北者たちには、このような国際法上の規定の適用だけでは済まされない特別な事情がある。脱北者の大半は、人間以下の放浪者の生活を強いられている。常に取り締まりを避けて隠れながらの生活をしなければならないため、各種の病気に苦しんだり、その上犯罪に巻き込まれ悲惨な死を迎える場合も少なくない。彼らは、国際社会が政治的難民と同等に配慮しなければならない経済的難民だ。人権保護や、人道的レベルで最大限の支援を受けてしかるべきである。

しかし、中国政府は彼らを単純な不法越境者と見なし、難民或いは一時的避難民という地位の認定さえ与えていない実情だ。ニューヨークタイムズの報道によれば、中国政府は最近、脱北者の捜索のため、保安要員を総動員しているかと思えば、脱北者を通報する人には報奨金まで支給している。ある教会で２０〜３０名の脱北者が逮捕されたという証言も出ている。そのように逮捕された脱北者達が北朝鮮に送還されれば、どのような処罰が待ち受けているのか、中国政府が知らないはずはない。

２００８年のオリンピック開催地に選ばれた中国は、非人権国家という自らのイメージ改善のため、多くの努力を傾けているようだ。そのような中国が、生死の分かれ道をさまよっている脱北者たちを割り出して北朝鮮に送り返すのに手段を選ばないのであれば、非人権国家というイメージの払拭は厳しいはずであろう。

我が政府も、もう少し積極的に脱北者問題の解決に乗り出さなければならない。率直に言えば、脱北者問題が太陽政策や中国との関係という陰に隠れてあまりにも消極的に扱われた側面はないのか、反省して見る必要がある。脱北者が、中国駐在の韓国公館を訪ねて公式的に保護要請をしているのに、特別な対策を提示しないでいると話も少なくなく聞こえてくる。

今回の事態を契機に、政府が中国政府ともう少し踏み込んで意見を交換し、脱北者問題の根本的な解決策を準備することを期待する。中国大陸をさ迷って北朝鮮に強制送還される脱北者たちを、このまま傍観するわけにはいかなない。