朝鮮民主主義人民共和国の金正日(キム・ジョンイル)総書記とロシアのプーチン大統領が、「モスクワ共同宣言」で、在韓米軍の撤退を強調したことは、見過ごすわけにはいかない。昨年の南北首脳会談以来「北朝鮮が、在韓米軍駐留の継続を容認した」との政府側の説明を鵜呑みにしてきた国民としては、今回のロ朝共同宣言で、混乱せざるを得ないためだ。
宣言文によると、「北朝鮮は、韓国からの米軍の撤退が、韓半島と東北アジアの平和と安全保障において先延ばしできない焦眉の問題との立場を説明」し、これに対し「ロシア側は理解を示した」という。
これを受け、韓国政府は「ロシア側が、在韓米軍の撤退を理解したのではなく、そのように主張する北朝鮮側の立場を理解するという意味」だと説明している。大統領府側も「北朝鮮は、本音と建前を使い分けている」とし、今回のロ朝間の合意内容に、特別な意味を与えようとしない様子だ。
しかし、昨年の首脳会談で、南北が「口頭で」在韓米軍の駐留問題を協議したことと、今回のロ朝首脳会談で「文書で」立場を確認したこととは、形式だけを見ても大きな違いがある。当然政府は、北朝鮮側の真意を把握するなど対応策を講じなければならない。
実際、昨年6月以降、北朝鮮が公式的に在韓米軍の撤退を主張したことが、一度や二度ではない。しかし、その度に韓国政府当局者は、北朝鮮側の在韓米軍撤退の主張が「対米圧迫用」だとか「内部結束用」に過ぎないと説明してきた。さらに、金大中(キム・デジュン)大統領は、今年3月の「国民との対話」で、「昨年6月に北朝鮮を訪問し、北朝鮮がこの半世紀の間主張し続けてきた在韓米軍の撤退など3項目で譲歩を取り付けた」と強調した。
しかし、政府が南北関係と在韓米軍との微妙な問題をあまりにも安易に認識していると懸念せざるを得ない。90年代以降、北朝鮮側が在韓米軍の存在を認める立場を明らかにしたことが、幾度かあったが、常に前提条件付きであったことを見逃してはならない。つまり、北朝鮮側の立場は、米朝平和協定を締結するか、在韓米軍が中立的な存在になって初めて駐留の継続を考慮する用意があるとしてきたが、これは、結局は韓米同盟体制の瓦解を目標としていると言える。
在韓米軍問題を含む全般的な対北政策で、政府は北朝鮮側の真意をどれほど正確に把握しているのか、疑問を抱かざるを得ない。