徹底批判:日本の右翼教科書の歴史観とイデオロギー
「教科書に真実と自由を」連絡会編、キム・ソククン訳
320頁 1万ウォン パダ出版社
7月の初めに日本に訪れた時、どの書店でも韓日間の「歴史戦争」をもたらした「新しい歴史教科書」が、ベストセラーのコーナーに置かれ、飛ぶように売れていた。
このままでは「新しい歴史教科書をつくる会」が目標とする教科書の採択率10%を優に超えるかもしれないという懸念が拭えなかった。
しかし、教科書採択が半分ほど進んでいる現在の状況から見て、2〜3%にも満たないことが ほとんど確実となった。その背景には、日本の大人たちが「新しい歴史教科書」を興味深く読みはしたが、これを学校で子供たちに教えたくないという微妙な心理が働いていると考えられる。まだ日本の民草がナショナリズムの強弱を適切に調整しているとでも言おうか。
市販中の「新しい歴史教科書」は、文部科学省の検定過程で137ヵ所も指摘を受け、修正し補完されたものだ。よって歴史にある程度素養のある人でも、この教科書の行間を詳細に読み込まなければ、何がどう問題になるのかが分からないという場合もある。
そのような人には、この「徹底批判・・・」を読むことをお薦めしたい。この本は、日本の著名な歴史家22人が「新しい歴史教科書」の「原典」であると自他共に認める「国民の歴史」をテーマ別に分け、一つ一つを詳細に分析して批判しているからである。
事実、「新しい歴史教科書」の歴史観を正確に把握するためには、この教科書と共に「国民の歴史」並びにその縮約版とも言える「検定申請本」(検定を受けるため、文部科学省に提出した原本)を比較検討することが欠かせない。
この3冊の本はいずれも「新しい歴史教科書をつくる会」が編者となっている。その上、この「会」の会長である西岡幹二は、検定に合格するために文部科学省の修正指示を受け入れはしたが、「新しい歴史教科書」のコンセプトは、「国民の歴史」をそのまま継承していると公然と言い振りまいている。
ところで「国民の歴史」は、約800頁にわたる膨大な分量である上、その内容には日本至上主義と韓国蔑視主義が所々に散りばめられており、かなり忍耐強く読まない限り、読破することは容易ではない。そのような点から「徹底批判・・・」は、韓日間の「歴史戦争」の実態を把握し、対応の論理を養うのに大いに役立つ。この本は「国民の歴史」に表われている誤った歴史観、事実の歪曲、政治的イデオロギーなどを明快な論理と資料を基に反論しているからである。
日本の歴史学界は「国民の歴史」が出版された当時(1999年末)、それは右翼の粗雑な政治的宣伝書に過ぎないと見向きもしなかった。
しかし「国民の歴史」が出版されて1ヵ月で70万部以上売れる超ベストセラーになり、さらに続いて「新しい歴史教科書」の出版となるや、慌てて対応策を講じずにはいられなかった。「徹底批判・・・」はその成果の一つだ。今後、韓国の歴史学界でも韓国人自らの手で書いた学問的批判書が出現することを願んでやまない。
チョン・チェジョン(ソウル私立大教授・韓国史)