いつ総力戦に乗出してもおかしくないほどの勢いだった米国が、軍事行動の開始を控えて息を整えている。このような変化は、「可能な限りすべての手段を動員する」、「全面的な報復に取り組む」など、攻撃的な発言を繰返していた米政府の高位関係者が、最近には「防衛的で長期的な対応を重視する」と発言していることからも察知できる。このため軍事専門家の間では、当面米国が軍事行動に踏切らないだろうとの予測も有力視されている。
▽過去とは異なった戦争=米政府内の代表的な鷹派のラムズフェルド米国防長官は25日、米国はテロとの戦いのため大々的な侵攻作戦は繰広げないと表明した。
長官は「テロとの戦争はその性格上、大規模な侵攻で解決できないだろう」 とし「第二次大戦当時ノルマンディー上陸作戦の時のような作戦開始日もないだろう」と述べた。
テロ惨事直後の12日、海外駐屯米軍に「皆さんは数日内にアメリカの英雄となるだろう」と、戦争が差迫っていることを示唆した時とはかなりの隔たりがある。
ブッシュ大統領もこの日、上下議会の幹部らをホワイトハウスに招いて米国の軍事状況を説明した場で「テロとの戦争は湾岸戦争のような既存の通常型戦争とは異なる」と強調している。
「米国はタリバン政権の転覆を目標としない」としたフライシャー・ホワイトハウススポークスマンの話や「ビンラディン氏の身柄引渡したが済んだ場合、タリバン政権は西側社会からの援助を受けられる」というパウェル国務長官の発言など、強硬一辺倒だった米国の態度に変化が覗かれる部分だ。
▽軍事作戦よりはタリバンの孤立作戦=15〜16日、キャンプデービット(大統領の別荘)で開かれた、国家安保チーム戦略会議では今度のテロとの戦いは軍事作戦だけで動くものではなく、外交、経済、情報など多角的にアプローチする必要があると結論付けたようだ。
従って、米国は砲声なき戦争をすでに始めていることになる。米国はテロ組織の資金源を閉ざすため、すでにテロ団体及び個人の資産凍結措置を下したのに続き、外交面でもアフガニスタンを孤立させる戦略が相当の成果をあげている。タリバン政権を認めていた3カ国のうち、サウジアラビアとアラブ首長国連邦がタリバンと断交し、パキスタンはアフガニスタン内の自国外交官を帰国させ、米国のテロとの戦いにも最も積極的に協力している。
専門家によると、米国の戦略は軍事作戦に先立って政治的、軍事的にタリバンを瀬戸際に追いやって自ら進んで投降するよう誘っていると分析した。
最近、ブッシュ大統領は議会演説など、機会があるたびに「煙を立ち込ませて穴の中の敵を呼込み、道ばたで見張って、逃げる敵を捕らえる(Smokeout)」と語っていることも同じ脈略に思える。
こうした中、米国がアフガニスタン周辺で軍事力を増強しているのは軍事力を誇示して米国の政治外交上の立地を堅固にするとともに、アフガニスタンに潜入している特殊部隊が危機にさらされた場合、即時救出の軍事行動に踏切るという思惑が伺える。
申致泳 higgledy@donga.com