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[社説]シナリオ通りの大統領の懇談会

Posted November. 03, 2001 11:26,   

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金大中(キム・デジュン)大統領の慶南(キョンナム)道民招請午餐懇談会で、発言しようとした一人の農民代表が、大統領警護室職員の制止にあい、一言も言えずに引きずり出された。このため、全国農民会慶南道連盟側が、大統領府の警護関係者の公式謝罪を求めるなど、波紋を呼んでいる。

金大統領のこの日の午餐懇談会は、約260人の各界代表が出席して、金大統領と共に食事をしながら大統領の「激励のお言葉」を聞くことになっているだけで、出席者の発言は、はなから予定にはなかったという。従って、今回のことは、大統領の巡視行事でたまに発生しうるハプニング的性格がないわけでもない。

しかし、この農民は、農民代表として公式に招請を受けて出席したうえ、行事の前に発言の機会を丁重に求めていたと伝えられている。戦後の事情に鑑みてみると、単なる英雄気取りや誇大妄想の発露ではなく、金大統領に米価暴落などで苦しんでいる農民の実状を真剣に伝えようとする純粋な動機と意図からであったようだ。言わば、わざと行事を妨害したり、または警護上の問題を起こすといった状況ではなかったものと判断される。

もとより、大統領が出席する行事には、様々な警護上の困難や進行上の問題点が突発的に起こりうる。それに対する徹底的な備えも重要だ。しかし、行事自体が硬直しすぎたり、形式的に流れては、寧ろしないほうがよかったという場合もあるだろう。今回の慶南道民招請午餐懇談会もまさにそのような場合といえる。

大統領が、各界の代表を招いて昼食を共にする懇談会なら、政府の業績を広報する席とだけ考えてはいけない。それよりは、国民の声を直接聞いて民意をつかむ機会としなければならない。大統領が民生の現場を目にし、国民の「生の声」を聞いてこそ、地方巡視の意味があるのだ。シナリオ通りに歓迎の辞を述べ「激励のお言葉」だけを聞く席なら、そして質問をしても事前に全て調整された内容や、はなからそのような機会もない席ならば、懇談会はしてもしなくても同じだ。「大統領と握手して、一度食事をした後、自慢話を並べ立てる席ならば、何の意味があるだろうか」という農民代表の抗弁が、より一層実感味を帯びている。

大統領府側は、通常の慣例からその農民の行動を制止したとするが、そんな脅威的で硬直した姿勢なら、どの市民が大統領に率直な話を打ち明けられるのだろうか。大統領にいかにして率直な民衆の声が、伝えられるのだろうか。