「北風(1997年大統領選挙の際、当時の与党が選挙に有利になるように、北朝鮮に銃撃戦を起こすよう要請したという事件)」事件と関連して、検察が9月に同事件の控訴審の裁判所に証拠として提出した書類は政界に大きな波風を立たせる、場合によっては来年の大統領選挙に大きな影響を及ぼしかねないものだった。裁判所は検察側のこうした証拠について到底認めることはできず、明らかにねつ造された書類だという判断を出した。
裁判所が、刑事裁判で検察もしくは被告人側が提出した証拠を認めない場合は、「信じ難い」などのえん曲な表現を使うのが慣行となっている。こうした慣行を破って、「ねつ造された書類」というストレートな表現を使った理由は、裁判を政治暴露の場として利用しようとする試みを妨げるためのものとして解釈することができる。
検察が提出した書類のうち、ハンナラ党の李会昌(イ・フェチャン)総裁が鄭在文(チョン・ジェムン)議員に手渡したという委任状のコピーには、「鄭議員が朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に360万ドルを支援する」という内容が入っている。裁判所は、金某氏が提出したこの委任状の取得経緯、書類の形式や内容、筆跡などからして、真実性を到底認めることができないと明らかにした。こんな重要な証拠なる書類が、捜査過程や第一審の裁判の時には取り上げられず、いきなり第二審の裁判過程で提出された経緯にも納得し難いものがある。
常識からして1997年当時、与党の大統領選挙候補がこうした致命的な工作を図り、こんなに明らかな証拠になるものを書き残すだろうか、という疑惑を感じる。鄭議員が北京のあるホテルで、北朝鮮の祖国平和統一委員会のアン・ビョンス副委員長と作成したという合意書についても、裁判所は加筆した痕跡があるとして、ねつ造された書類としか考えられないと判断した。
検察は第二審判決について、「客観性が欠如された恣意的な判断」だとして反発しており、最終審である最高裁判所の判決を残すばかりとなった。だが、野党総裁と関連した、政治的な波長が大きな書類ならば、検察は裁判所に提出する前に、徹底した確認と検証をすべきだった。「そうじゃなかったらそうれでいい」というふうに添付しておいて、裁判所にその判断を任せるような事柄ではなかったのだ。
裁判所は大統領選挙期間中に北朝鮮の関係者に会ったハンナラ党の鄭議員に対しては第一審より軽い罰金1000万ウォンを言い渡した。選挙に有利になるように雰囲気を醸成するために、北風を要請したという証拠がないため、当局の許可なしに北朝鮮の人事と接触した罪だけ有罪だと認めたのだ。
証拠が不十分なら不十分ななりに、裁判所の判断を求めるのが検察の取るべき姿勢だ。裁判所が考えるに、「ねつ造された疑惑」があるほどの書類を新たな証拠として提出した検察の思惑を疑わざるをえない。検察は最高裁判所の判決に備えるためにも第二審裁判所が提起した証拠ねつ造の疑惑を究明すべきだ。