金大中(キム・デジュン)大統領は昨日、ノルウェーのオスロで開かれたノーベル平和賞100周年記念シンポジウムで演説した。金大統領が1年前そこでノーベル平和賞を受賞した時と今の状況を比べる国民の心境は、複雑この上ない。
1年前、金大統領は受賞演説で「私と金正日(キム・ジョンイル)総書記は、民族の安全と和解そして協力を念願する立場から、相当レベルの合意を導き出すのに成功した」と述べた。しかし、それから1年が経っても、南北関係にはそれ以上の進展が見られない。むしろ、退歩と旧態の再演があっただけだ。昨年の南北首脳会談時の感激と期待は消え去り、虚脱感と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の裏切りが、その場を埋め尽くしている。
金大統領は、昨日の演説でも「太陽政策だけが唯一の代案であり、南北はもとより、全世界の平和と安全に寄与するウィン・ウィン政策なのだ」とし、1年前と同じ言葉を繰り返した。金大統領はまた、9月の南北閣僚級会談で10項目の合意を取り付けたことについて「実に誇らしい民族的成就だ」と自賛した。
国民は、金大統領のこのような対北認識が、もはや変わらなければならないと考える。太陽政策が唯一の代案だというが、だからと言って北朝鮮側に対する戦術と手段まで、いつも全く同じでなければならないというわけではないからだ。北朝鮮側が無理を言って強引に出る時には「ムチ」も取り出さなければならないにもかかわらず、これまで太陽政策にはムチはなく、終始一貫して「ニンジン」だけを差し出したのだ。9月の閣僚級会談で達成した「10項目の合意」も、韓国側が北朝鮮側の策略に引っ掛かり、性急に内実をさらけ出したにすぎない。10の合意のうち、進展したのは何もない。このような実状にも関わらず、果たしてこれが外で誇れることなのだろうか。
金大統領の「一貫した」対北認識によってもたらされる問題は、想像以上に大きいのかも知れない。「一旦、注ぎ込んでみよう」という政府の態度が、北朝鮮側に強引な主張や要求に出られる口実を与えているという点がそうであり、大統領が南北関係の現実を正しく把握できていないのでは、という懸念もそうだ。大統領補佐陣にとっては「大統領の考えとは異なるから」と報告し難くさせている、という心配もある。国民は先日、国家情報院の幹部が、国会で金正日の答礼訪問について「実現できると思う」と答弁した例から、そのような兆候が読み取れる。
今は、国外で太陽政策を派手に宣伝することに神経を使うよりも、これまで行なってきた太陽政策の内容と成果を再検討して反省する時だ。その第1ボタンが、まさに金大統領の対北認識の転換なのだ。