サッカーの韓国代表チーム「ヒディンク師団」が「千の顔」へと成長している。
ベストイレブンはもちろん、選手のポジション、攻撃ルート、守備の組織力などが試合を重ねる度に見違えるほど変身し、代表チームのカラー全体が多彩になってきているのだ。ロングパスに続くサイド突破、マンツーマンの密着マークなど、公式化されたかのように凝り固まっていたかつてのプレースタイルは、今や色あせた白黒写真のアルバムから探さなければいけないくらい昔の話となった。
▲変身の第1歩、ポジションの破壊〓ヒディンク監督は1月の就任時から強調していた「オールラウンドプレーヤー」を重用する原則を一貫して貫き、思い切った攻撃戦術を実験した9日の対米国戦でその威力を立証した。
この日の韓国のポジション変更は、相手チームの米国にとって目まぐるしいものだった。
一人の選手が固定したポジションをばか正直に守っていた米国とは違い、韓国は試合の出だしから黄善洪(ファン・ソンホン)、李天秀(イ・チョンス)、崔兌旭(チェ・テウク)の3角攻撃ラインが前後左右を縦横無尽にかけめぐり、相手選手陣を錯乱させた。後半31分には守備の崔眞迵(チェ・ジンチョル)の代わりに右MF崔誠勇(チェ・ソンヨン)を投入する一方、柳想鉄(ユ・サンチョル)の代わりに宋鐘国(ソン・ジョング)をディフェンシブハーフに投入した。35分には朴智星(パク・チソン)の代わりに金都根(キム・ドグン)を交代させ、MF組織にさらに大幅の変化を与えた。
このような過程を通して、かつて韓国チームの攻撃の出発駅であり守備の終着駅と言われた洪明甫(ホン・ミョンボ)の存在意義が薄らぎ、強いプレスと短く速いパスで武装した全ての選手が攻守両面にくまなく加わるようになった。代表チーム全体がひとつの有機体として機能し動いているのだ。
▲誰も知らない代表チームレギュラー〓このように各選手のポジションが流動的に変化することで、誰一人として固定したレギュラーを確信することもできなくなった。高宗秀(コ・ジョンス)が負傷で抜けている間に新鋭の崔兌旭が恐ろしい勢いで浮上し、洪明甫が常にレギュラーだったセンターディフェンスをめぐり宋鐘国と柳想鉄が競り合っている。黄善洪、薛鐗鉉(ソル・ギヒョン)、金度勳(キム・ドフン)、崔龍洙(チェ・ヨンス)、李東国(イ・ドングク)が熾烈なつばぜり合いを繰り広げる最前線はもちろん、ゴールキーパーもまた金秉址(キム・ビョンジ)と李雲在(イ・ウンジェ)の一本勝負が避けられない状況だ。
代表チーム内のレギュラー争いが熾烈化し、選手全体がぴりぴりとした緊張感の中、試合の度に期待以上の能力を発揮するのは言わずと知れたこと。レギュラー選手1、2人のコンディションに一喜一憂していた弱みをカバーできるようになったのもボーナス効果だ。
▲強い体力、それだけが生きる道〓このような背景の下、代表チームのプレースタイルにも一大変革が起きている。ロングパスが姿を消した代わりに短く強いパスワークが向上すると同時に、プレスに続く特攻が次第にその威力をあらわし始めた。まだ完成しきっておらず確実な勝利とは距離があるが、どのチームにぶつかっても少なくとも相手のゴール前までは対等な試合を展開することができるという自信を得た。
90年のイタリアワールドカップと94年の米ワールドカップを現場で取材したロイター通信韓国支社マーティン編集局長は、この日の試合を見て「韓国の前半プレーは戦術的に非常に躍動的だった。前半の調子で行けば、米国はもちろんワールドカップ本大会で同じ組になったポーランドやポルトガルといったヨーロッパチームとも十分に対決できる」と評価した。
問題は、ヒディンク監督のサッカースタイルを展開するためには並々ならぬ体力が必要だということだ。米国戦後半の韓国の組織力が緩んだのも、体力が急激に落ちてからだった。ヒディンク監督が召集するたびに体力テストを選手選抜の第1基準にしているのも、そのような理由からだ。
Bae Keuk-In bae2150@donga.com