昨年9月11日に起きた米国に対するテロ攻撃は、炭そ菌を使った「バイオテロ」とアフガニスタンの「洞くつ戦争」に続いている。かつて経験したことのない新しい形の戦争と脅威は、世界の人々の意識構造と経済活動に大きな変革をもたらしている。まるで映画が現実世界で実現したようだ。
まだ映画の中にとどまっているものがもう一つある。それは「サイバーテロ」あるいは「サイバー戦争」。最近、頻発するハッカーによる不正アクセス事件と、ウイルス流布事件が初歩的なサイバーテロに当る。サイバーテロはコンピューター通信網をハッキングしたり、ウイルスを流して、国と軍司令部の意思決定システムを混乱、あるいは、まひさせることで打撃を与える。すなわち、「痴ほう国家」にしてしまうのだ。
ミサイル基地や航空管制システムを乱したり、人工衛星をハッキングして衛星通信を混乱させることもできる。そうすれば、戦闘機が無茶なところに爆撃をかけたり、ミサイルの誤動作で自殺行為をさせることもできる。無線通信に異状が発生すれば、味方に艦砲射撃がかけられる。論理爆弾というウイルスが原発のコンピューターに感染すれば災いが起きる。銀行がまひすれば、国のすべての経済活動が止まってしまう。移動通信ウイルスが広まれば携帯電話は狂ってしまうだろう。
サイバー戦争の特徴は敵軍が見えないということだ。通信網とつながったコンピューターがある所ならどこでも活動できる。だから敵軍と味方の区別があいまいで、前方と後方の区分がない。
そこで、97年の米下院の報告書には、「中国はサイバー戦争が核戦争より戦略的に效果的だとの判断ですでに準備作業に突入した」と書かれている。実際、2000年に在ユーゴ中国大使館の誤爆事件が起きた際、米国を狙った数多くのハッキング攻撃が行われた。昨年初頭に中国と米国の間に海南島飛行機着陸事件が起こった時、米国に対するハッカー攻撃が後を絶たなかった。
米国はサイバー戦争または情報戦が21世紀の主要な戦争形態になると予測し、96年に国防総省傘下にサイバー戦特殊部隊であるレッドチーム(Red Team)を設け、活動を開始させた。そして、99年にはサイバー戦統合司令部を発足させ、防御用サイバー戦兵器はもとより、攻撃用のハッキング技術とウイルスの研究開発を始めたという。
ロシアも99年に米宇宙海洋システム戦センターへの不正アクセスに成功、能力の一端を見せつけた例がある。なかでも極めて強力な電磁波で、遠距離にあるヘリと戦車の電子装置を損傷する電子武器、「ハプガン」を開発しているという。私たちが普通の飛行機に乗ると、離着陸の際に携帯電話をオフにするよういわれるが、まさにこの原理がハプガンに適用されているのだ。 一方、日本も去年始まった「5ヵ年防衛力整備計画」にサイバー戦部隊の創設をうたっている。
しかし、なによりも驚くべきことは北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)だ。
北朝鮮はすでに86年に「ミリム大学」を設立、最高の頭脳を集めてサイバー戦士を育て始めた。後に「指揮自動化大学」へと名称が変わったこの特殊大学は、今も毎年100人の特殊要員を人民武力部偵察局や特殊部隊に送り出している。このように育てられた人材は、現在世界トップクラスのサイバー戦遂行能力を保有していると伝えられている。
それでは、韓国はどうか。前述した外国の例をマスコミから知るようになったように、筆者が国内の事情を知り尽くしているとは言い難く、なかなか率直に言いにくい面もある。しかし、明らかなことは、テロへの対応は口先だけでするものではないという点だ。毎日検討ばかりしていては困る。手遅れになる前に優秀なサイバー戦士を養成し、対応体制を備えるなど、サイバー戦争が朝鮮半島で現実のものになることを防いでいかなければならない。
今や軍においても強い体力に劣らぬ頭の良い人材が必要な時代となった。多くの優秀な人材が軍に入らずに産業界の技能者としてベンチャー企業などに就職する現実を考慮し、思い切った人員確保計画を練り上げる必要がある。最高レベルの人材で武装しなければ絶対勝てない。同時に情報保護産業を防衛産業に指定して積極育成していかなければならない。
文禄慶長の役の直前に「10万良兵説」を主張した栗谷(ユルゴク)先生が今の時代を生きているならば、何をされているだろうか。きっとサイバー戦争に備えていたと思う.
李光炯(イ・グァンヒョン)KAIST未来産業碩座教授(電算学、国際協力処長、本紙論説委員)