李明載(イ・ミョンジェ)新検察総長は、検察総長としての任務を始めるにあたって、恥入る思いを持って臨まなければならない。専ら、野党までが自分の就任を肯定的に評価するほど、検察を取り巻く内外の友好ムードにひかれて、気を取られてはならない。検察総長の任命に関するコメントは、まだ始まったに過ぎず、決してこれ限りではないのだ。8ヵ月前に検察を離れ、全羅道(チョルラド、金大統領の出身地)出身ではない李総長は、今回自分が起用された背景には格別な意味が込められている、ということを念頭に置いて仕事に取り掛かるべきだ。
現在の検察は、前任の総長が袋だたきにあって中途退陣した影響で、大きく動揺している。検察が直面している全面的な危機は、元をただせば、大統領が人事を誤ったことから始まったわけだが、検察の組織そのものの責任も、決して軽いとは言えない。検察は、政権が変ってもなお「政治権力の侍女」である、という疑惑を晴らせなかったばかりか、不正疑惑にかかわった総長の弟を処理するにも一罰百戒の姿勢で扱えないほど、権力者の顔色をうかがうのが精一杯だった。
金大中(キム・デジュン)大統領が、自ら宣言した公平人事の原則にもとづいて、真の検察刷新のために新任の総長を任命したということであれば、検察は汚名を晴らす絶好のチャンスを迎えたことになる。李総長は、この機会を活かして、検察を政治権力の影響から離し、信頼される中枢捜査機関として再建する責任がある。今年6月の地方選挙と12月の大統領選挙の際、厳正な中立を守れるように検察を率いることも、李総長にとっては、検察を立て直す上で、またとない機会となるはずだ。
李総長はまた「李容湖(イ・ヨンホ)ゲート」をめぐる特別検事(特検)による捜査を通じて立証された、現在の検察が、本来の任務である捜査においても、数々のすきをのぞかせた恥ずべき組織であるという事実を直視すべきだ。特検が、発足後およそ1カ月で、李容湖ゲートの中心人物とされるデヤン相互信用金庫のオーナー、キム・ヨンジュン容疑者を逮捕し、愼承男(シン・スンナム)前検察総長の弟、承換(スンファン)容疑者を逮捕することで、これまでの検察捜査がずさんなものであったことが明るみになった。イ・チョルヒ、チャン・ヨンジャ容疑者による手形詐欺事件など、数件の大規模不正事件を暴いて「当代最高の検事」と評される李総長のやることは、はっきりしている。各種ゲート疑惑について、徹底かつ完璧な捜査を進められるよう組織を督励して、少しの疑惑も残らないようにすることだ。
李総長の最初の課題は、検察組織の刷新である。満身創いと化した検察組織を整備し、国民の信頼を取戻すためにも、刷新作業を急がなければならない。そのためには、出身地(地縁)や出身校(学縁)を優遇する、前近代的な接点の代りに、能力と資質による公正な人事を断行すべきだ。新任の検察総長に対する評価は、これらの課題を如何に果すかによって変ってくるはずだ。