政府が自ら述べたことばを覆したことで、もう一度国民を失望させた。天下り人事をしない、という約束を破って、公企業の韓国ガス安全公社の社長に呉弘根(オ・ホングン)前大統領広報首席秘書官を就かせた人事がそれだ。いくら政権末期とは言え、このように国民は眼中にないとすれば、残り1年の任期がどうなるか、深く懸念せざるを得ない。
政府が天下り人事の防止策として、人材プールを設けて、経営専門家を選出すると国民に約束してからまだ一年も経っていない。現政権の発足以来、とくに公企業の社長職を戦利品のように分け与えていることが多い、という批判にあうと、政府は機関長評価委員会を作って、民主的な方法で客観性のある人事をすると約束していた。そして、今回再びそうした手続きを通さずに呉氏を任命することで、政権自ら、信頼を落としている。
いったい、呉氏がガス安全業務と何の関係があるというのか。そんなにだれが就いてもよいポストなら、なぜ国民の税金から膨大な資金を援助してこんな機関を設立し、こんなポストをつくったのだろう。呉氏の経歴からして、政府が韓国ガス安全公社の社長に内定するまで、多分ガス安全業務について一度も聞いたことさえなかったと思う。
そんな人が急にガス安全公社の社長に任命された理由について、訳知りの人は多くいる。呉氏は昨年、政府のマスコミ各社の税務調査当時、国政広報処長を受け持ち、税務調査を批判する国内外のマスコミや国際言論団体と激しいかっとうを起こした主人公だ。大統領府が呉氏のこのような行為を政府に対する大きな功労と考えて、このポストを与えたとすれば、現政権の道徳性をどう評価すればいいのだろうか。
このような非専門家が公企業に入り込んだことで、そうでなくても民間部門に比べて相対的に振るわない公共改革はすでに始末に負えない状態になった。このような人事をして、どうやって公共労組を説得し、改革を厳正に自ら進めることができるだろうか。公企業の改革が進められていないために発生する害悪の後始末に、国民がその経済的な負担を負うことになる。政権の「分け前分配」のような人事の後遺症を国民に負担させることは決して許されないことだ。
ガス安全公社の社長評価委員会の一部の人は、産業資源部の要請通りに人選をしたと主張し、実務者は上部機関(大統領府)の意志にしたがって呉氏を推薦したと言っている。いくらよい制度、手段があるとしても、今回の人事のように最高任命者がこれを守らずに、利用する意志がないとすれば何の意味もない。世論に耳を傾けないで、独断で人事をする政府に何を期待することができるだろうか。