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[オピニオン]動員政治と「政治実験」

Posted March. 05, 2002 09:39,   

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4日後には、与党民主党の大統領選候補者らの済州道(チェジュド)での国民参加の予備選挙結果が明らかになる。草の根政治を図ろうとする民主党の「政治実験」は、密室政治やボス政治よりは一段と新鮮に見える。しかし、その新鮮な風とともに動員政治という持病が、ガンのように広がっており、民主党の「政治実験」に暗い影を落としている。

「2億ウォン以上の不法な選挙資金を使った」という民主党の金槿泰(キム・グンテ)顧問の「告白」は、特別に驚くほどのことではない。誰もが「案の定」と当然のように考えたことだろう。政治家の中で、不法選挙資金を使わない者がいるだろうか。にもかかわらず、彼の「告白」は関心を引いた。金顧問は、民主党の「政治実験」もこのままいけば、不法選挙資金がまかり通るだろうと、憂うつな予告を投げかけた。

ただでさえ、すでにカネの話があちこちで聞かれる状況だ。済州道はもとより全国各地域で、誰々は数万人の党内予備選挙への参加申込み書を受け取り、誰々は数千人を動員している、といった話が公然と交わされている。このような組織的な動員は、明らかに「金権選挙」「堕落選挙」を招くだろう。

米国の大統領選予備選挙が最初に実施されるニューハンプシャー州の有権者数は約70万人で、共和党員が約26万人、民主党員は20万人、残りは無所属だ。民主党の候補者であれ、共和党の候補者であれ、誰でもその気さえあれば形勢を一転させることができる小さな選挙区だ。米国の大統領選挙のばく大な資金力と組織力に比べれば、そこで自分の党の有権者20万〜30万人を操ることは、たやすいことのように見える。しかし、米国の歴代の大統領選候補者らは、誰一人としてそのようなことはしなかった。動員や買収を行えば、有権者が直接告発してその候補者に致命的な打撃を与えるからだ。

ニューハンプシャー州の予備選挙にも、もちろん候補者の個人演説会があり、熱烈な支持グループの姿も見られる。しかし大半の支持者らは、ある候補がただいいという理由で、一銭も受け取らずに自発的に奉仕するのである。演説会も、組織的な動員がないため、聴衆の数はわずか数百人の水準である。

米国の大統領選挙の選挙費用の内訳を見ても、組織的動員がないという事実がはっきりと現われている。TVの広告料が全体選挙費用の60%以上を占め、選挙専門家の雇用と世論調査費は合わせて20%程度に過ぎない。残りの20%は、選挙資金の寄付金募集の費用だという。

組織管理費が50%以上を占める韓国の選挙風土とは対照的だ。言うまでもなく、その主要項目は有権者の動員費だろう。

今回の民主党の済州道予備選挙を見てみよう。動員競争に火がつき、各候補者の陣営に重複して予備選挙参加を申し込んだ人が、約1万7000人もいた。書体が全く同じ申込み書が、数百枚も見つかった。申込み書は、締め切り当日に各候補者の陣営が、数千枚を一度に提出した。自分が書いた申込み書を持って、じかに民主党を訪れた人がどのくらいいただろうか。問題は、そのように大量に提出れた申込み書が「手ぶら」で作られただろうか、という点だ。

ある候補者のために働く組織責任者のため息まじりの話が改めて考えさせられる。「私が持っているカード7枚が、みんな取り引き停止になった。・・・昨日は、私に普段「兄貴、兄貴」と慕ってくれていた組織の親しい後輩が、地方から電話をかけてきて『この野郎、組織管理を頼むなら、金を送れ』と悪態をつき、ほんとうに嫌な一日だった」

今の民主党の予備選挙制度は、不作用が大きくなる以外にない。より多くの国民選挙人団を確保するためには、その選挙人団が選出される「母集団」を最大限「自分の畑」から作らなければならない。申込み書を多く提出できるように動員してこそ、「味方」が選挙人団に選出される確立が高まるからだ。したがって動員に

血眼になるほかないのである。民主党側もそのような動員自体を深刻に考えていないようだ。国民的支持基盤や党勢を拡充するための一つの過程であるという程度に考えているようだ。

しかしいかなる形であれ、動員政治は最も後進国的な政治スタイルだ。権力による脅迫であれ、カネと利権を利用した誘引であれ、狂信的な組織によることであれ、いずれも民主主義を脅かし、わい曲させる。

有権者自ら動員を拒むことが、最上の方法だ。決して誘因されないというプライドと名誉を守らなければならない。有権者がしっかりしていれば、候補者がいくら動員と買票を試みても成功しないだろう。しかし韓国の有権者は、ニューハンプシャー州の有権者のようではないから問題なのだ。

堕落の兆しを見せている民主党の「政治実験」に、動員政治の根を掘り出せる代案や装置はないものだろうか。

南賛淳(ナム・チャンスン)論説委員