中国瀋陽の日本総領事館で、チャン・ギルス君の親族5人が中国の武装警察官に強制連行された事件で、中日両国間に外交摩擦が生じているなか、日本総領事館側が連行に同意したという中国政府の発表や、日本のマスコミの報道が相次ぎ、日本の外交当局は窮地に追い込まれている。
また、中国警察に拘束されたチャン・ギルス君の親族5人と、瀋陽の米総領事館に駆け込んだ朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)からの脱出者3人が、韓国内の北朝鮮スパイによる報復や北朝鮮内に残る親戚への迫害などを心配して、韓国ではなく米国行きを希望していると伝えられ、今後、米国の対応に関心が集まっていると、ニューヨークタイムズが11日報じた。
米総領事館は12日、「総領事館に駆け込んだ北朝鮮からの脱出者3人の身柄について、中国側と5日間にわたって話し合いを続けているが、状況は以前と変わっていない」と述べ、身柄の扱いに何ら進展がないことを示唆した。
朝日新聞は11日、駐日中国大使館の発表として、瀋陽の日本総領事館の領事が8日、領事館構内に駆け込んだ北朝鮮住民5人の中国警察官による連行を上司に携帯電話で確認して同意したうえ、謝意を表わしたと報じた。
また、当初領事館駆け込み事件を目撃した日本の副領事は、中国の警察官5、6人が領事館内に駆け込んだ男性脱出者2人を強制連行する際、質問をしたり事情を聞こうとはせず、正門で中国の警察官に制止された女の子の母親に中国語で「静かにしろ」とだけ言って、約10分間放置していたことが明らかになったと、読売新聞など日本マスコミが11日、報じた。
これに先立ち、中国外務省の孔泉スポークスマンは「調査の結果、中国武装警察官が、身元不明者5人を連行したのは、日本の領事の同意を得たうえでのこと」と発表した。これに対して、北京の日本大使館は「日本の領事は同意していない」と反対声明を出した。
日本政府は、11日から外務省の調査チームを現地に派遣し、中国警察官の総領事館立ち入りの経緯と領事館職員の対応について真相調査に入る一方、早ければ13日にも、杉浦正健外務副大臣を中国に派遣し、北朝鮮からの脱出者5人の身柄引渡しに向けた交渉を行なう方針だ。
日本政府は、チャン・ギルス君の親族5人の身柄引渡しで、いったん第三国に出国させた後、韓国入りさせる案を検討中だという。
一方、政府は、チャン・ギルス君の親族5人を人道主義的立場から速やかに対応することや、彼らが韓国行きを望む場合、受け入れる意思があること、中国と日本の外交摩擦が、今回の事件の対応に影響を及ぼしてはならないという立場を中国と日本政府に伝えた。
李英伊 yshwang@donga.com