今年3月の映画界の不正疑惑に対する捜査に続き、今度は放送界がどよめいている。いわゆる「PD事件」といって、4〜5年おきに芸能界の不祥事が明るみになり、これに対する捜査が行われていたが、今度は芸能界の不正を根絶するという検察の意志が固いとみられる。
「寸志」の、1次的な意味合いは「ささやかな意味を込めた粗品」である。感謝の気持ちを伝えること自体はさほど問題にはならないものの、その寸志が、対価性の強いものであったり、金額が過度に大きければ問題になる。
音楽的才能のある新人歌手を、放送に出演させてもらったことへの感謝の意味で、マネージャが担当番組のPDやスタッフに食事を持てなした程度のことなら未だしも、巨額のカネを受け取り、その対価として資格足らずの無名歌手を出演させたとすれば、問題にならざるを得ない。
時折、芸能人を志望する人から「スターになるには、カネを渡したり体を貢がなければならないというが、本当なのか」と、とんでもないことを聞かれる場合がある。
この業界に詳しくないが故の愚問だったが、たまに悪質なマネージャーの手にかかり、詐欺にあう可愛そうな芸能人志願者がいるという噂も、時おり耳にしたことがある。PDや放送局幹部へのロビー用との名目で、数千万ウォンのロビー資金を要求されたり、酒の席に呼び出され、まるでホステスのように雰囲気を盛り上げなければならない、哀れな役目に借り出される芸能界志願者たちは、おおむね芸能界デビューはおろか、その時の借金のために、本当のホステスになるケースもあるといわれる。。
もちろん、これはごく一部の話である。ある程度、名の知られたマネージャーたちは、すでに公人同様であることから、正常にビジネスを展開する一方、健全な形でスターを発掘している。大部分のPDも良い番組作りに専念しており、マネージャーと食事をしても必ず自分で食事代を払う人もいる。それに、この頃はスターのパワーが一枚上手とあって、いくら有名なPDであろうと、スターの気に入らなければキャスティングできないことから、逆にスターへのロビーを余儀なくされる始末。
どの社会、どの集団にも、人一倍欲張りの人が必ずいるものだ。ただ、その数人のために、集団全体がゆがんで見えてはいけないだろう。
数年前、ある歌手のマネージャーが放送局で、某歌番組のPDに近づき、耳元でささやいた。
「車のキーを貸してください」
そのPDは、車を借りたいのだと思ったそうだが、しばらくして戻ってきたマネージャーは、PDに車のキーを返しながら、帰宅後車のトランクをぜひ開けてみてほしいと耳打ちして去っていった。ようやくそのPDは、マネージャーが賄ろや寸志を車に置いていったのだと気づき、落ち着かなくなってしまった。
下手に賄ろを受け取って、ひどい目に遭うかもしれないと思い、とにかくその物を返そうと決心して、仕事を終え、そっと自分の車のトランクを開けたPDは、思わず微笑んでしまった。
トランクの中には、山から汲んできた薬水(湧き水)の樽が入っており、体に良い薬水ですから、ぜひご飲用くださいという、マネージャーの親切な手紙まで入っていた。この程度の愛嬌めいた賄ろは、検察でも目をつむってもらえるはずなのだが‥。
nkjaka@hanmail.net