25日午後10時頃、「時間外勤務」をチェックするカード読取り機がセットされたソウル市内のある区役所の状況室。夜遅い時間に区役所職員が一人一人現われ始めた。彼らの多くはいったん退勤し区役所周辺で個人的な用事を済ましてから、再び区役所に入って勤務カードを読取り機に当てたり、指を指紋認識装置に当ててから去って行った。不当に「時間外勤務手当て」を着服する現場だった。
同日午後10時から約40分間、状況室に立ち寄った職員は合わせて14人。このうち、半数は、一杯飲んだ様子だった。このように、一部の公務員が3、4年前から一部政府省庁と地方自治体で導入されている電子式の時間外手当て確認システムを悪用して、不当に手当てを受け取っている事例が増えている。とくに、政権末期に入ったことで、公職社会の綱紀がゆるんでいる雰囲気に便乗した「手当て泥棒」がさらに威勢を振るっている。
中央政府省庁職員、李某さん(32、女)は「指紋認識システムが設置されているところはましなほうで、カードで入力する省庁では当直者にカードを預けるのが一般化している」と述べた。ソウルの区役所に勤めている金某さん(34)は、「時間外勤務手当てを操作するケースが多いのは事実だが、給料が安い公務員の間では、仕方がない慣例として受け止められている」と述べた。
しかし、こうした現状に対する監督や制裁は全く行われていないのが実情である。監査院は「時間外勤務手当てを担当している部署はなく、各部署に対する一般監査の際にも時間外勤務についてはあまり気を使っていない」と明らかにした。政府省庁の監察部署に勤めたことのある朴某さん(41)は、「時間外勤務についてのにせの申告は公務員社会では公然とした事実だが、監査部署でも大目に見てくれる場合が多い」と述べた。
これについて公務員職場協議会の朴ジェボム政策企画局長は、「公務員による時間外手当ての操作は、政権末期に入りつつ、公務員のモラルハザードが深刻になっているためだ」と分析した。建国(ゴングク)大学行政学科の河美勝(ハ・ミスン)教授は、「時間外勤務手当てを支給する制度は望ましいが、これを悪用する例が多いだけに、制度の見直し策を講じ、不意の点検を強化して公平性を損なわないようにすべきだ」と述べた。
金善宇 sublime@donga.com