釜山(ブサン)、慶尚南道(キョンサンナムド)の集中豪雨で浸水し、6日連続、孤立状態の慶尚南道金海市翰林面(キムへシ・ハンリムミョン)チャンバン里デハン村。15日午後2時から、ボートで約2時間かけて見て回った村は、まるで巨大な「黄土色の湖」そのものだった。
134世帯のうち40世帯が孤立したデハン村はもとより、翰林面に近いジンマル、ボンジャンバン、スルミ、モジョンマウルなど、10ヵ所の村も同じような状況だった。数十万坪の農地をはじめほとんどの家も浸水しており、小学校と工場など2階以上の建物だけが、わずかに見える程度だった。
翰林面一帯は現在、920世帯が完全浸水したほか、260世帯が孤立状態にある。救助設備が入りきれず、いたる所に家畜の死骸が転がっており、悪臭が鼻を突いた。浸水を免れた高台の住民たちも村の入口に出てきては、水に浸かって跡形もなくなってしまった農地を呆然と眺めていた。
デハン村開発委員長の朴スンド(46)さんは「田んぼやビニールハウスが全て水に浸かっているため、今すぐには実感がわかないかも知れないが、水が退けば皆大きな失意に陥ることは、火を見るより明らかだ」として憂慮を示した。
ハンリムジョン駅からデハン村までは「船」で10分の道程。村に出入りする唯一の運送手段は、119救助隊と韓国救助連合会など、民間の救助隊が運航している30隻余りのボートだけ。住民たちは、かろうじてボートに頼って「陸に外出」している。
翰林面シサン里シホ1区に住むチャン某さん(50)は「今、雨が止んだとしても、水が完全にひくまで1週間はかかるはず。今年の耕作も台無しになってしまって、先行き真っ暗だ」とため息をついた。
雨が降り続いている上、洛東江(ナクトンガン)上流のイムハダムが、15日午前3時から1秒当り600トンの水を放流しているため、洛東江下流の水位が下がるスピードが落ち、水のひきが遅れている。慶南にはこの日もさらに30ミリ前後の雨が降った。一部地域の住民は、生活用水の不足でろくに洗うこともできず、皮膚病まで患っている。金海市保健所の関係者がボートで訪問、防疫と予防接種に全力を尽くしているものの、手におえない状態。
住民たちは、一日も早く政府がこの地域を「災難地区」に指定して、特別対策を講じるべきだと訴えた。慶尚南道議会も16日臨時会を開き、特別災難地域に指定することを建議する計画だ。
こうしたなか、金海の住民対策委員会は15日、翰林面事務所での抗議デモに続き、15日午後7時、面所前で集会を開いて、政府に対し補償対策などを求めた。
デハン村の庄屋のチョン・ソンウさん(40)宅の農具倉庫で、味噌汁とキムチをおかずに隣人たちと昼食を取っていたチェ・ドクチャさん(52)は「十分予防できた状況をここまで悪化させた政府は、いい訳のしようがないはず」と語った。
今回の豪雨により、慶尚南南だけで19人の死傷者と、1800世帯5200人余りの被災者が発生した。また、1500棟の建物と5800ヘクタール余りの農地が浸水し、被害額だけでも1000億ウォン台に上っている。
姜正勳 manman@donga.com