現政権下で閣僚解任決議案が国会に提出されたのは13回で、弾がい案も6回も発議された。その都度、政界には殺気がただよった。そのなかで可決されたのは昨年8月の林東源(イム・ドンウォン)統一部長官に対する解任案だけだった。現政権の失政が原因を提供した側面がなくはないが、解任案や弾がい案が乱発されるのは望ましいことではない。
今回、解任案の対象になったのは金正吉(キム・ジョンギル)法務部長官だ。野党ハンナラ党の李会昌(イ・フェチャン)大統領候補の息子の兵役疑惑を捜査しているソウル地検特捜1部の朴栄琯(パク・ヨングァン)部長を留任させたのが直接的な原因となった。われわれは、すでに朴部長の交代を要求したことがある。しかし金長官の解任案票決を強行することについては考えが違う。彼がうまくやったからではない。
首相任命同意案の票決と閣僚の解任案の処理は、その意味と性格において同じものではない。票決は憲法上の手続きだが、解任は政治的な責任を問う行為だ。首相代理の同意案否決で力のバランスが確認された状況下で、金長官の解任案処理まで押しつけるのはハンナラ党にとっても有益ではない。閣僚推薦権利者の首相が空席のままだ。長官を解任すれば後任者を任命することができないということを考慮すべきだ。
院内過半数を確保したハンナラ党は、現実的にすべての閣僚を解任できる力を持っている。しかし、やり過ぎるのは及ばぬも同様だ。ハンナラ党は、この辺で止まった方が賢明だ。もっと踏み込んでは強者の専横と見られる可能性もある。
国民は終わることを知らない政争にあきれており、妥協と譲歩が失われた政界の殺風景さにあきあきしている。ハンナラ党が金長官解任案処理を強行し、これを民主党が腕力で阻止してぶつかりながら破裂音を出す場合、国民はもう一度そっぽを向けることになるだろう。今回の争いは、どっちも敗者になるだけだ。
両党は、いずれも深呼吸をして戦意を殺さなければならない。金長官自身も論議の余地を取り除くべきだ。朴部長の交代を再三促す。ハンナラ党の自制で、今回の事態が政争の悪循環を断ち切るきっかけになることを望む。