豪州の9月は、韓国でいう「花咲く春の三月」にあたる。赤道の南半球なので、季節はわれわれと反対だ。春の消息といえばやはり花。先週まで野花フェスティバルが開かれていたパース市内のスワン川べりのギングスパークは、いま原色の野花で花の屋敷となっている。青い芝と数多くの野生花、クチバシの大きなペリカンがたわむれるスワン川、そして澄んだ青空と青い川を背景に表れた都会のスカイライン。ギングスパークで仰ぎ見るパースの都会風景。清涼感を極める一杯のシャンパン。
午前8時、乗客20人を乗せた旅行社(オーストラリアン・ピナクルツアーズ)のドイツ製「マン」(MAN)四輪駆動トラックがパース中心街を離れた。目的地は240km北方、インド洋側のナムブン国立公園にあるピナクル砂漠(Pinnacle Desert)。貨物を載せる空間をバスの内部のように改造した、砂漠ツアー用の8トントラックは時速100kmで高速道路を走った。
衛星都市ジュンダルプを経由し、1時間後にヤンチェブ国立公園に到着した。コアラ、ウォンバットなど土着の野生動物を囲った状態で見せてくれる所だ。垣根の外にあるゴルフ場で、おもしろい場面を目撃した。フェアウエーを10匹余りのカンガルーが占領しているなか、ラウンド中のゴルファーは全く気に掛けずにドライバーショットを飛ばした。
さらに2時間半を走って訪ねたのは、海岸沿いの小さな村セルバンテス。真っ白い珊瑚粉でできたビーチを踏んでトラックは海辺へ向かった。ピナクル砂漠は、ここから7km先にある。未舗装の道路を走って国立公園に入ると、巨大な砂丘(Dune)の砂の丘が水平線の下に広がった。光の強さによって 時々刻々と色合いを変える砂丘。時にはゴールデンイエロー、時にはインディアンピンクの色をかもしだした。
車から降りると砂丘トレッキングが始まる。ピナクル砂漠を一周して駐車場に戻ってくるトレッキングコースは、一方通行の土道(3.5km)。24人乗り以下の中小型車両は通行が認められるが、ピナクル砂漠の真髄を楽しみたいなら、やはりとぼとぼと歩いた方が良い。
砂丘とは、風に載って飛んできた微細な粒子の砂煙が、長い歳月にわたって積まれて形成された巨大な丘。ピナクル砂漠は、海岸線と平行する形で数kmも続いている砂丘のど真ん中にあった。
駐車場を抜け出て、曲がった道を曲がると壮観が繰り広げられていた。写真でだけ見てきたピナクルが目の前に現れたのだ。黄金の色の砂丘の地面から、突然そびえて思いっきり空を突いている数千、数万の峰の集合。実際に向き合ってみると、その感動は写真でみた時とは深みが違っていた。自然に対する驚異感で頭が重くなるくらいだった。
昇っては下りることの頻繁な砂丘の丘陵。ピナクルは、その砂漠の至るところに散在していた。形もいろいろで、大きさもまちまちだった。小さいのは膝までの高さで、大きい方は3.5mもあった。触ってみると硬い石灰岩の石柱で、色も随時変わった。雲が太陽を隠すと灰色、太陽の光線がそのままあたると黄金の色、夕陽には樺色。ピナクルの間の砂丘の砂の床を見よ。波のように風の跡が刻み込まれてある。どの芸術作品が、これほどまでに美しいだろうか。さらに美しいのは、ピナクルの陰の下で青い葉っぱを育てる強じんな生命力だ。その干からびた砂漠でも生命は維持される。こういうピナクル砂漠は、大陸豪州でも唯一ナムブン国立公園でだけ見ることができる。
トラックは砂丘の中心を探して海辺に向かった。遠くから眺めた砂丘はすっかり白色だ。珊瑚がつぶれてできた砂であるためだ。30分余り走る砂の地面には、石の角が多かった。全部ピナクルだ。砂丘の中心に入ったトラック。60代の老練なトラックドライバーは、アクセルを深く急に踏んだ。トラックはごう音を出しながら白い砂丘をあっという間に登った。四輪駆動の真価を確認する瞬間だった。同時にデュン(Dune)ドライブが始まった。
砂丘の床。風が吹く方向の正反対にある斜面は、傾斜が30度を越えていて絶壁に近かった。逆さまに押し込まれそうな恐怖が感じられるこの砂丘をトラックが疾走した。悲鳴と歓呼が入り乱れた。それを3、4回したら、今度はサンドボーディングだ。ドライバーは、あらかじめ準備したボードを取り出してお客さんに与える。この砂丘ですべりを楽しむのだった。
パースに戻る道。道路は羊と牛が暇そうに草を採る巨大な草原、名も知らない野花で黄色く彩られた丘陵、樹が空を覆った林を走った。西豪州の原始のままの自然を楽しむには全く不足することのないこの道。ピナクル砂漠の四輪駆動ツアーは最も豪州らしい旅行だ。
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