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[オピニオン]真実は過酷なもの

Posted October. 20, 2002 22:33,   

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「真実、過酷な真実」。スタンダールの小説「赤と黒」の初めに登場するこの文句は、フランス革命期の政治家、ダントンの言葉である。民衆の利益を代弁するジャコバン党の中心人物で、雄弁家として革命の気運を高めたダントンだが、自由奔放な気質に浪費癖がひどく、常に腐敗などの疑いをかけられていた。結局、ダントンは、革命政治は清れんで厳正でなければならないという信念のもと、恐怖政治を行っていたロベス・ピエールによって、断頭台で処刑され、35年の生を終えた。不正にからんでいるのではと常に疑われていたダントンだけに、彼が「真実は過酷なもの」と思っていたのも無理ではないだろう。

◆最近の韓国社会にも「真実の過酷さ」を痛感する人は少なくないだろう。大統領選挙を控えて、政治に暴露が横行し、相次ぐ不正事件を目の当たりにして、多くの国民は道徳感覚すら麻ひしてしまいそうな気がするだろう。軍隊と関連したでっち上げの是々非々や西海沖で起きた北朝鮮(朝鮮民主主義共和国)との交戦についての情報報告の縮小指示、産業銀行の現代商船への4000億ウォンにのぼる不正融資疑惑など。これらを耳にする一般市民が驚いたり、怒りを感じたりしているうちに、無関心になるとしても仕方がないことだが、事件にからんでいる当事者は真実を知っているはずだ。彼らには真実が過酷を超えて手に負えない怪物のように恐ろしく感じられるかも知れない。

◆革命期のフランスと今の韓国社会を比較するとどうだろう。共通点としては、経済的困難や政治的混乱の中で、多くの人々が変化を望んでいるという点を挙げることができよう。もう一つ重要な点を挙げると、フランス革命期の人々は、自分たちの力で社会を変えることができると信じていたのに対して、今の韓国の人々は一気に完璧で、かつ理想的な変化は訪れないと考えているという点ではなかろうか。こうした態度を冷笑的と言えるかも知れないが、見方を変えると、それだけ市民の意識が高まり、民主主義的な制度が定着していると受け止めることもできるだろう。

◆経験が積もれば、意識も高まる。数多くの不正の中心にいたダントンも、厳正ではあったが冷酷で頑固だったロベス・ピエールも、最後は断頭台の露と消えた。韓国社会もそれに劣らない痛みが刻まれた歴史のパノラマを経験してきた。こうした苦痛を乗り越える過程で、人々が体得した意識の重さに比例して、民主主義も成長するだろう。フランス革命期のように、過激な行動で表出しなくても、韓国市民には真実を感じ取る力があり、それを審判する能力もある。不正を犯した数人が自分に過酷な真実をいくら隠そうとしても、円熟した市民の目を避けて通ることはできないだろう。

金長権(キム・ジャングォン)客員論説委員(ソウル大教授・政治学)jkk@snu.ac.kr