米外交評議会(CFR)の主任研究員チャールズ・クプチャン(ジョージタウン大教授)氏は米国の時事月刊誌「アトランティック」に寄稿した「西欧の終末」の中で「次の文明の衝突は、同じ西欧勢力同士の米国と欧州の間で起きるだろう」と主張した。
▲再浮上する欧州〓クプチャン教授は、欧州連合(EU)が経済統合に続き、統合憲法の制定と迅速対応軍の創設を進めるなど政治、軍事、外交の統合を次々と進めている点をあげて「欧州は今後、米国にとって、避けられない対抗勢力になるだろう」との見方を示した。
EUの年間経済規模は、米国の100兆ドルに肉迫する80兆にのぼる。エアバス社は最近、航空機の生産量でボーイング社を圧倒しており、ノキアは世界最大手の携帯電話メーカーの座を守っている。会計不正とテロ事件などで信頼を失った米国の代わりに、投資家が欧州に押し寄せることによって、ユーロの相場が上昇し、ドルの基軸通貨としての座を脅かしている。EUは、対米技術依存度から脱皮するために、独自の衛星ネットワーク(ガリレオ)を今年構築した。
しかし、同教授の指摘によると、米国は、EUの成長を無視して一方主義を固守し、両勢力間の不和を自ら招いているということ。ブッシュ米大統領は、京都議定書とミサイル迎撃ミサイル(ABM)協定から一方的に脱退しており、同盟諸国と話し合わずに「悪の枢軸」と定義付け、対イラク攻撃を準備している。
クプチャン教授は、EUが△米国の中東政策に反対姿勢を示したこと△京都議定書の発効を主導していること△鉄鋼と農業分野での貿易紛争も辞さずにいることなどを、米国に対するEUの「報復」ケースにあげた。
同教授は「双方がかっとうの危険性を認識する場合、競争勢力として両立できるはずだが、パックスアメリカーナ(米国の支配による世界平和)以降の時代に備えるのに失敗する場合、必然的に西欧文明間の衝突を招くだろう」との見方を示した。
▲実務的な難点は依然として存在〓しかし、欧州が自分らの希望通り米国に敵対する強い勢力に成長できるかどうかについては、さまざまの異なった意見がある。なによりも、主要懸案ごとにEU加盟諸国の間で利益が相反し、常に議論のタイムリミットを超過してしまうなど政策決定のメカニズムに問題があるとの指摘が多い。
エコノミスト誌は12日付で「経済は底を打ち、外交政策は紛らわしく、改革は遅々と進まない状況で、誰がEUに入ろうとするものか」と自嘲した。同誌は、欧州経済を復興させるうえで唯一の希望だったユーロを支えてきた成長安定協定が、主要加盟諸国の景気低迷で揺れていることをはじめ、対イラク攻撃など主要外交懸案をめぐって、各加盟諸国の立場がそれぞれ大きく異なる点を例に上げた。農業市場の開放に備えて農民らに補助金を与えようとする共同農業政策も、フランスの反対で施行が続けて先送りされるなど統合市場の将来を暗くしている。
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