北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の核問題に対する政府の対応が釈然としない。北朝鮮に対する態度と政府内の動きのいずれもそうだ。
政府がきのう、南北閣僚級会談で得られた北朝鮮の核関連合意は、一言で言って国民を無視する駄作だ。「核問題を初めすべての問題を対話を通じて解決するよう、積極的に協力することにした」という情けない内容の共同報道文を聞いて、わが代表団が彼らの表現通り「北朝鮮を圧迫した」と信じる国民は誰もいないだろう。北朝鮮の核開発に対する国民の深刻な憂慮を反映していないのはもちろん、「北側の具体的な釈明と米朝核枠組み合意順守の約束を盛り込ませる」とした政府の要求は影も残さずに消え去った。
それぐらいの結果ならば、かえって会談場をけ立てて出てくるべきだった。核枠組み合意と韓半島非核化宣言まで違反した北朝鮮を、そうした柔らかい言葉で束縛できるとでも思っているのか。北朝鮮の核開発について遺憾の意も表せないのに、どうやって核放棄を見出すといっているのか、とうてい理解できない。
北朝鮮が核兵器を開発していると認めたにもかかわらず、これまで大統領が主宰する国家安全保障会議(NSC)が一度も開かれていないのも腑(ふ)に落ちないところだ。NSCは、国家安全保障にかかわる対外政策と軍事政策、国内政策をとりあつかう憲法にもとづく機関だ。北朝鮮の核問題は、誰が見てもNSCが早速とりあつかうべき最も重要な懸案のひとつだ。
北朝鮮の核開発についての情報を入手しておいて沈黙を保ってきた政府は、もはややるべきことはほうっておいたまま、北朝鮮に向かって怒っているふりをしているのではないだろうか。あたかもよく練られたショーを見ているようだ。金大中(キム・デジュン)大統領は、北朝鮮の核問題が国際的な懸案に浮上しているにもかかわらず、NSCを召集しない理由を国民に明かさなければならない。そうした疑惑のため、きのう大統領府で開かれた金大統領と大統領選挙候補者5人による懇談会も、国民の目には「事態のもみ消しのためのジェスチャー」に過ぎない。このように国家安保と直結する北朝鮮の核問題に対して、政府が安易な対応を続ければ、国民の不信は深まるしかない。国民の深まった不信はまもなく憤りにつながるだろう。